息苦しいと訴え早朝のERに搬入された症例の腹部
😱 解説
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皮膚に網目状の紅斑である網状皮斑(livedo reticularis)を認める
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その本体は小動脈の狭窄および小静脈の拡張による末梢の循環障害
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単なる寒冷暴露でも出現するがショックやDIC,血液疾患などに注意
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特に本例の様に呼吸困難感を伴う場合は高度の末梢循環不全を示唆
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本例の最終診断は急性肺血栓塞栓症+ショックで乳酸値は98mg/dL
🚑 臨床現場
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本例は症状と網状皮斑から状態が極めて悪いとすぐに判断できた.肺音が清であり心不全は否定的.頸静脈も座位陰性(ただし最終診断を考えるとこれは微妙:ショック時はあまり有用でない?)
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胸部X線(肺うっ血なし)とベットサイド心エコー図(右室拡大+マッコーネル徴候)から急性肺血栓塞栓症と診断してヘパリンとtPA(モンテプラーゼ)をER室で投与した
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状態が少し改善後に造影CTを行い診断を確定(深部静脈血栓も合併).不安定な状態でCT室への安易な移動は出来るだけ回避する必要がある(死のトンネル).ICU入室時には網状皮斑は消失
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息切れで来院した症例
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解説
- 頸部に規則正しい隆起(画質不良ですいません 🙇)
- 陽性波は指で容易に圧迫できた ➜ 内頸静脈の拍動
- Ⅰ音または橈骨動脈拍動の直前に出現 ➜ 頸静脈a波
- 座位で明瞭なa波といえば巨大a波(cannon a wave)
- 本症例の最終診断は2:1伝導の房室ブロックであった
🐞 巨大a波
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その機序は三尖弁の閉鎖中に心房収縮が生じて,頸静脈に逆流するためである.3度房室ブロックによる巨大a波が有名であるが(自験例),P波がQRS直前に生じる不整脈であれば,あらゆる病態で出現する(心室期外収縮の自験例)
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巨大a波の規則性と出現頻度である程度の鑑別は可能と思う(完全房室ブロックや心室期外収縮なら不規則で稀/2:1房室ブロックなら規則的で頻).ウェンケバッハ型の2度房室ブロックも挑戦したことがあるがこれは難しい(自験例)
🉐 不整脈に関する過去の投稿 ➜
コチラ(WEB版なら右欄からも選択可能)
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中学生(サッカー部)が左膝痛を訴えて来院
⚽ オスグッド病
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正式名はオスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter disease)で成長痛とも言う
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成長期のスポーツ選手に多く,脛骨粗面部の骨性隆起(下図の矢印)と圧痛が特徴的
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患者層と身体所見から診断可能(確定にはX線で骨端核の乱れや遊離骨片を確認する)
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成長が終了すると多くは自然治癒(必要なら運動制限やストレッチング,テーピング)
💁過去の番外編の投稿は
コチラ へ
(投稿者 川崎)
食後に息切れがする症例の心音(第3肋間胸骨左縁)
🐰 匠の耳ならば…
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収縮期駆出性雑音が心室期外収縮+代償性休止後に増大 ➜
閉塞性肥大型心筋症を疑う
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収縮中期に過剰音があり,その後に駆出性雑音 ➜
閉塞性肥大型心筋症の偽駆出音の疑い
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Ⅱ音の分裂が期外収縮+代償性休止後の心拍では消失している(タイミング的に後半成分)
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肥大型心筋症では流出路狭窄の増加時には大動脈成分が消失 ➜
Ⅱ音の分裂は奇異性分裂
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よって本例は聴診から「収縮期僧帽弁前方運動を伴う閉塞性肥大型心筋症」と診断できる
🙇 種明かし
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実際に匠であっても聴診だけでここまで診断できるかは不明です(投稿者には心音図を見ながらの聴診でも到底無理でした)
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この心音図は症例報告:偽駆出音を呈した非閉塞性肥大型心筋症の1例(Circ J 2018;82:1718-1720)の補足データです
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投稿原稿では「偽駆出音と収縮期雑音が心室期外収縮後の心拍では,より早期に出現して音量も増大している」とのみ記載
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しかし査読者の一人が期外収縮後のⅡ音分裂消失は流出路狭窄による大動脈成分の消失を示唆(つまり奇異性分裂)を指摘
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この素晴らしい査読をしていただいた匠の先生が本投稿を読まれたらぜひ連絡を下さい.とても感謝しております
m(_ _)m
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(Original)
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関連投稿 ➜
過去の歴史クイズ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)
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大動脈弁置換術後の症例(慢性期)
👹
解説
- 臥位では内頸静脈や外頸静脈は視認できない(手ブレですいません 🙇)
- 臥位では外頸静脈を認識 ➜ 上縁は頸部の中央で中心静脈圧の上昇なし
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よく見ると外頸静脈の急峻な陥凹 ➜ Ⅱ音後でy谷(フリードライヒ徴候)
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深吸気で外頸静脈が怒張 ➜
クスマウル徴候陽性 ➜ 収縮性心膜炎と診断
臨床現場 💨
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心エコー図をオーダーしたけど「収縮性心膜炎を示唆する所見はありません」という結果でした.でも患者さんによく話を聞くと,「無理した時にはお腹が張る感じがします」と言われた.BNP値の上昇もないけど,初期の収縮性心膜炎が疑われるため慎重にフォロー中です.
🉐 収縮性心膜炎に関する過去の投稿 ➜
コチラ(WEB版なら右欄からも選択可能)
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肥大型心筋症のⅣ音
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心尖部にあるⅠ音直前の低調音で,ベル部(聴診器の小さいほう)を軽く胸に当てると聞こえる.ベル部を強く押し当てたり,膜部(聴診器の大きいほう)では通常,聞こえない.
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高度の大動脈弁逆流で手術を予定している症例
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独り言
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個人的な経験では,高度の大動脈弁逆流を有するほとんどの症例で観察可能.ただし本例のように肘を軽く曲げるなどの工夫が必要.体位によっても変化する(特に頸動脈
➜ 実例)
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このような身体所見のちょっとしたコツは成書や論文には書いていません.よって貴重な経験や知識を皆で共有する方法が望まれます(本ページを密かに宣伝
😊 是非投稿を!).
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加齢などに伴う動脈の蛇行+表在化による偽水槌脈には注意が必要です.この偽コリガン脈は日常臨床でしばしば遭遇しますが,聴診など他のフィジカルを組み合わせればすぐに見破れます
😊
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関連投稿(大動脈逆流に関連する他の身体所見)
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