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2024-02-29

今週の一枚 🎯

昨夜からの胸痛でERに搬入された症例

👂 解説
  • 座位で右耳垂に45度の皺あり(フランク徴候
  • 耳垂の皺は二本あり(double earlobe crease
  • よくみると外耳道の毛(ear-canal hair)あり
  • 心電図にはST変化なし(後壁誘導 V7-9 含む)
  • 心エコー図では下壁に軽度の壁運動低下あり
  • 緊急CAGで回旋枝(#13)に99%の狭窄を確認
  • 引き続きPCIで治療(治療中もST-T変化なし)

👀 フランク徴候あれこれ
  • 45度の耳垂皺(フランク徴候/Frank's sign)が冠動脈疾患と関連することはメタ解析でも確認されています(Int J Cardiol 2014;175:171-5).
  • 本例のように外耳道毛が合併した耳垂皺例では冠動脈疾患の確率がより上昇するという報告もあり(Indian Heart J 1989;41:86-91 ➜ 典型自験例
  • しかし「座位皺 vs 臥位皺」や「片側皺 vs 両側皺」の差異はあまり検討されていません.本例のように同一側に複数本ある耳垂皺の追加意義も不明

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-26

前屈 😳 スゲー

大腸疾患の術前採血でBNP高値(800台)を指摘された症例

💙 解説
  • 端座位で頸静脈拍動は視認しない
  • 前屈負荷後に頸静脈拍動が出現!
  • 拍動は陥凹でなく隆起と思われた
  • よくみると自然吸気時に隆起明瞭
  • S3はないがS2の肺動脈成分は亢進
  • 胸部X線で肺うっ血や胸水はなし
  • 心エコーでEF 20%+肺高血圧あり
  • 最終的に非代償性左心不全と診断

💚 前屈負荷はユニーク
  • 安静時に頸静脈拍動を認めなくても,各種負荷で拍動が出現することがあります.吸気負荷が最も簡便ですが,左上肢挙上負荷も役にたちます.通常は「拍動なし→陥凹出現」です.安静時に陥凹があれば,負荷後に隆起になる場合もあります(陥凹の消失は原則ない).
  • しかし前屈負荷では本例のように「拍動なし→隆起出現」の変化を経験することがあります(他の自験例).このようなユニークな変化の機序としては,前屈に伴う胸腔内圧の上昇に加えて,息止めの効果や心臓との垂直距離の短縮なども考えられるでしょうか?
  • 本症例は当初「胸部症状はない」と言われました.しかし頸静脈所見を確認後に再度問うと,「数年前から労作時に息切れがするようになったため日常生活を抑えている」と述べられました.自覚症状の有無に加えて,年齢相応の活動的な生活か否かの確認も大切です.

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-22

今週の一枚 🎯

心不全増悪に対して利尿薬を追加した症例
外来の再診時には手がとても冷たくなっていた

👽 解説
  • 再診時には内頸静脈の拍動は完全に消失
  • 手指や爪床に末梢チアノーゼは認めない
  • 症状に関して特に言及なし(元々乏しい)
  • 採血ではCr上昇,BUN上昇,BNP大幅低下
  • 利尿薬の過剰投与 ➜ 血管内脱水と判断
  • 利尿薬を減量して早期のフォローを予定

💣 WRF (worsening renal function)
  • 心不全例では利尿薬(特にループ系)の追加で血清クレアチニンの上昇を認めることがあります.WRF(腎機能悪化)と呼ばれ,その定義は48時間以内に絶対値で0.3mg/dL以上あるいは前値より50%以上の上昇などです.
  • 機序は交感神経/RAA系の亢進による末梢血管のトーヌス亢進や体液量減少による心拍出量の減少などが考えられます.このWRFは心腎連関の一つですが,予後悪化の指標であることが知られているため注意が必要です.
  • 本例のように座位で内頸静脈拍動が明瞭だった症例(=中心静脈圧が高度上昇)で,利尿薬の追加後に頸静脈拍動が綺麗さっぱり消失した時には要注意です.必ず手を触ってみて冷たくなっていないか確認してください.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-19

臨床=組合せ

心雑音を指摘された症例(座位)

👻 現場実況
  • 収縮期駆出性雑音あり(鎖骨も)➜ 大動脈弁狭窄の疑い
  • 心エコー図では中等〜重症の大動脈弁狭窄と判断された
  • しかし頸動脈に明瞭な拍動あり(矢印)➜ ASは否定的?
  • エキスパートによるエコー再検で流出路狭窄狭窄と診断
  • 頸部に雑音の放散があったが本例は大動脈弁硬化も合併

💚 組み合わせ
  • 本例は明らかな非対称性中隔肥大やS字状中隔を伴わない非典型的な左室流出路狭窄であったため,診断に少し時間を要したと思われました(もっとも僧帽弁の収縮期前方運動は明瞭でしたが...)
  • 大動脈弁狭窄症の頸動脈拍動は通常,不明瞭です(厳密には緩徐な立上り+上昇脚の小振動).しかし加齢に伴う動脈蛇行で皮下に出現した動脈が明瞭な拍動を示すことがあります(自験例
  • 身体所見では常に組み合わせて考えます(例:聴診+頸動脈).聴診も組合せです(例:駆出性+部位).心エコー図も然り(例:レポート+検者?).臨床も然り(身体所見+心エコー図)

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-15

定量の外頸静脈・定性の内頸静脈

息切れで紹介された症例(座位)

👶 解説
  • 座位で外頸静脈の上下運動を明瞭に視認できる
  • 上縁は頸部中央で右房からの垂直距離は20 cm
  • 中心静脈圧は確実に上昇と判断(約20 cm水柱)
  • もちろん内頸静脈の拍動も視認できる(動画*)
  • ただ内頸静脈の拍動上縁の判定は難(定量困難)
  • 本例の最終診断は非代償性の左心不全であった

 😎 独り言
  • 中心静脈圧の評価に対する外頸静脈の信頼度は決して高くありません(自験例).やはり内頸静脈に重きをおくべきです(その理由).しかし外頸静脈でも本例のように明瞭な上下運動を認める場合は大いに信頼しています.
  • 外頸静脈は詳細な評価を可能にします.例えば収縮性心膜炎に特徴的な急峻y下行(フリードライヒ徴候)や不整脈の診断(過去の投稿)です.個人的には外頸静脈は定量評価向きで内頸静脈は定性評価向きと思っています.

松下記念病院 川崎達也)