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2024-01-29

大動脈弁狭窄のS4

研究1Am J Cardiol 1971;28:179-82
  • 大動脈弁狭窄症124例の検討では,重症(最大収縮期勾配≧75 mmHg)ならほとんどの場合Ⅳ音が存在する.一方,成人の大動脈弁狭窄症でⅣ音の存在は,40歳未満では重症を意味する.

研究2Circulation 1975;51:324-7
  • 40歳以上の大動脈弁狭窄例では,S4ギャロップは重症(弁口面積≧0.75 cm2) の85%(65人中55人),中等症までの86%(7人中6人)であった.おそらく大動脈弁狭窄では聴診が不正確であるため,S4の有無はこの評価にはあまり役立たなかった.

研究3Circulation 1962;26:92-8
  • 大動脈弁狭窄症患者46名では,第4音が検出される場合,通常は狭窄が重症(圧較差>70 mmHg,左心室収縮期圧>160 mmHg)と結論付けることができる.

👶 個人的な思い
  • Ⅳ音を有する大動脈弁狭窄は,左室コンプライアンスがより低下しているため重症であることは理にかなっています.しかしさらに進行したステージでは左房が疲労してくるため,おそらくⅣ音は小さくなり最終的に心房細動に移行すると思います(肥大型心筋症でも同様の現象があると予想:当院の論文).
  • 大動脈弁狭窄では大きな雑音のため過剰心音を聴診することが困難です(S1ですら難しい:音響隠蔽現象).そんな時は聴診よりも触診(心尖拍動のA波増高)が有用でしょうか(過去の投稿).もっとも下図の様な極小S4は心機図では検出できても,聴診や触診で認識できるとは到底思えませんが...😐


松下記念病院 川崎達也)

2024-01-25

今週の一枚 🎯

- 4ヵ月ほど息切れが続く肝硬変の症例 -

👽 解説
  • 心窩部に膨張した静脈を認めた(上図の矢印)
  • 同部位から連続性雑音を聴取した(上図の下)
  • 同雑音は吸気時に増強した(下動画に音あり)
  • 心電図と胸部X線、心エコー図は正常であった
  • 最終診断は Cruveilhier-Baumgarten 静脈雑音
  • 自覚症状の息切れは門脈圧亢進症に起因する?


💫 クリュヴェーリエ・バウムガルテン症候群(Cruveilhier-Baumgarten syndrome)
  • 肝硬変や特発性門脈圧亢進症などで臍静脈または臍傍静脈が拡張した病態(自然発生的な門脈側副血行路形成)で,静脈周囲で雑音(クリュヴェーリエ・バウムガルテン静脈ハム)やスリルを認め,肝萎縮や脾腫なども伴う.
  • 名前の由来はフランスの解剖学者 Cruveilhier(1791-1874)の報告(Human JB Bailiere 1829-1835;1:16)とドイツの病理学者 Baumgarten(1848-1928)の報告(Arb Geb Pathol Anat Inst Tubingen 1907;6:93)
  • 同雑音を認めれば門脈圧亢進ありと判断できる().なおこの古典的な静脈性ハム音が吸気時に増強する機序は,心臓右側への静脈血流の増加によって説明可能(吸気時に三尖弁逆流が増加するリベロ・カルバイヨ徴候と同様)

山本内科循環器科 山本正治)

2024-01-22

心不全と難聴

時々息遣いが荒くなる難聴例(端座位)

👂 解説
  • 指示が通らないため安静の頸静脈所見は判定困難
  • 左上肢挙上で内頸静脈の明瞭な陥凹が出現(矢印)
  • 本人の発語が混入して心音は十分には評価できず
  • 最終的に収縮の保たれた心不全(HFPEF)であった

🙉 追加コメント
  • 米国の70歳以上の横断的な国民健康栄養調査では,難聴の有病率は心不全症例で74.4%と,非心不全症例の63.3%より高率です(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2018;144:273-5).さらに心不全のある高齢者では難聴が強いほど活動性が低下することも報告されています(Clin Interv Aging 2020:15:635-43).
  • 上記の全米調査で心不全および難聴のある参加者のうち補聴器を着用しているのはわずか16.3%でした.聴力障害なら筆談で対応すればいいのではと思われますが,心不全患者では認知症が43%とかなり高率です(J Card Fail 2017;23:464-75).そんな時こそ左上肢の挙上負荷が役立つかもしれないので追加してみてください.

松下記念病院 川崎達也)

2024-01-18

🏆 論文:ハミングバード徴候

  • 当院で実習された医学部6年生の方が経験した症例が出版 🎉
  • 主訴は1月前から持続する動悸感と継時的に増悪する息切れ
  • 心拍数は123 bpmで頸静脈から判定した中心静脈圧は上昇
  • ユニークなのは頸静脈拍動が肘動脈拍動の倍程あり(動画
  • 脈波図はキャノンa波(下図C矢頭)と通常a波(*)の疑い
  • 最終的な診断は2:1伝導の心房頻拍による頻脈性心不全です


🐝 ハチドリ徴候/Hummingbird sign
  • 本例の頸静脈所見のようにすごい速さの振動を,当院ではハミングバード・サインと呼んでいました(過去の投稿).このフィジカル所見にはまだ名前はない様なので,本論文のタイトルを”Hummingbird-like cannon a-waves”としました.フロッグ・サインの亜型として普及するといいのですが...
  • 身体所見に興味を有する医師にとって,新たなフィジカルを発見し報告することは何事にも勝る喜びだと思います(命名できればなおのこと).当院が関与できた新報告には"Atrial cannon sound"や"Diastolic paradoxical jet flow murmur"などがあります.もっともこの命名が普及しているとは思えませんが...

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-01-15

論文 🏆 こだわりの塊

  • 非常勤医師の先生が当院で経験した症例(少し前😅)
  • 今まで経験したことがない不思議な拡張早期の雑音
  • 心音心機図と心音心エコー図を駆使して音源を追求
  • 最終診断はHCMの拡張期奇異性血流に関連する音

- 図Bと図Eの*が雑音の本体です -

😀 独り言
  • こんなちっぽけな音にこだわっても意味ないだろう〜という声が聞こえてきそうです.肥大型心筋症の拡張期奇異性血流は心事故と関連することが報告されていますが(J Am Coll Cardiol 1992;19:516-24,心エコー図ですらその検出にあまり力を注いでいない施設が多いのではと思います.
  • 確かにとても微妙な音ですが,心臓フィジカルを追求する1人としては決して看過できない所見でした.よって心エコー図のエキスパートと一緒にその音源を追求してみました.興味がある方は是非,論文を読んでみてください.心音心機図や心音心エコー図の美しさを自画自賛しています.

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)