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「松下ERランチ・カンファレンス」の名物に「今週の一枚」があります.実際に当院で経験したその週で最も印象的な症例の画像コーナーです.
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今回は身体所見(+ベットサイド心エコー)で診断しても治療に悩む(悩んだ)例です.本ページとも関連すると思われるので共有しておきます.
呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)
👽 解説
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頚静脈は座位で視認かつ収縮期の駆出性雑音あり
- 胸部X線で心拡大と肺野の透過性低下 ➜ 心不全
- ベットサイド心エコー ➜ 中隔肥大と流出路狭窄
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閉塞性肥大型心筋症による心原性ショックと診断
- 左室内腔が小さい ➜ 圧較差低減のためまず補液
- ショック状態が遷延するため昇圧薬の導入を検討
- β作動型の昇圧薬投与は回避(流出路の圧較差↑)
- 本例ではノルアドレナリン下で少量の利尿薬追加
- その後ICU ➜ 経時的に血圧は回復し点滴から離脱
👹 振り返り:ベストチョイスは
フェニレフリン?
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米国(AHA/ACC)のHCM治療ガイドライン2020:閉塞性肥大型心筋梗塞(HOCM)患者の急性低血圧の治療では,収縮力や心拍数の増加を避けながら前負荷と後負荷を最大限に高めることが極めて重要である.フェニレフリンなどの静脈内血管収縮薬はこの危険な状態を改善できる.β遮断薬は収縮力を抑制し拡張期充満期を延長することで前負荷を改善するため,血管収縮薬との併用も有用である.
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肥大型心筋症の心原性ショックに対する治療レビュー:β作動薬特性を持つ昇圧薬は一般的に避けられる.純粋なαアドレナリン性血管収縮薬であるフェニレフリンは,変力作用を誘導することなく全身血管抵抗を高めるために広く使用されている.ノルアドレナリンは主にαアドレナリン受容体を刺激する強力な血管収縮薬かつ軽度のβ1アドレナリン作用のため収縮力と心拍数の両方が増加し流出路圧較差を悪化させるリスクがあるためHOCM患者には有害となる可能性がある.
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日本循環器学会が関連するガイドライン(全42編):HOCMの低血圧時あるいは心原生ショック時のフェニレフリンに対するコメントは一切なし.唯一の関連コメントは,非心臓手術における評価の術前評価と術中モニタリングで「フェニレフリンまたはノルエピネフリンは左室収縮機能や拡張機能低下をきたし難いことから,昇圧に使用可能である」のみ(2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン
P107).
👻「今週の一枚」の過去の投稿は
コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)
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