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2024-12-05

負荷で改善しているわけではないと思います

弁置換術後の症例(座位)

💧 解説
  • 座位で頚部中央に明瞭な拍動を視認する
  • 陥凹なので静脈拍動 ➜ 非代償性心不全
  • 深吸気負荷で胸鎖乳突筋が明瞭になった
  • それと同時に内頚静脈の拍動は不明瞭に
  • BNP:前回172 pg/ml ➜ 今回305 pg/ml
  • 過労回避と減塩指導で早めのフォローへ

💦 個人的見解
  • 吸気時には胸腔内圧が陰圧になるため,健常者では中心静脈圧が低下します.しかし安静座位で内頚静脈の拍動を視認できるほど中心静脈圧の症状した症例(例えば15 cm水柱 or 11 mmHg以上)では,その圧が正常化することはほぼないと思います.実際に圧の測定はしていませんが,頚静脈所見はほぼ悪化します(拍動上縁の上昇あるいは拍動パターンの変化[陥凹から隆起など])
  • しかし日々の臨床では,吸気負荷で内頚静脈の拍動が逆に不明瞭になる症例に稀ながら遭遇します.本例のように吸気という動作に伴い胸鎖乳突筋が明瞭になることもその一つの理由かと思います.内頚静脈は深部静脈であるがため,胸鎖乳突筋を介した皮膚面の拍動で認識する必要があります.胸鎖乳突筋が緊張すると深部の拍動を認識しにくくなるということは容易に理解できます.
  • そもそも論として「安静時に座位で内頚静脈の拍動を認める症例には負荷が必要なのか?」という問題があります.頚静脈評価の普及を願って作成したアプリ「シンプル頚静脈©」では,安静時に陽性なら負荷は不要と謳っています.負荷で重症度を細分化したいとの想いは分かりますが簡便な半定量評価で十分なのかもしれません(例えば3分割法:拍動上縁が鎖骨上窩・頚部中央・顎下)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-12-02

心不全の身体所見

  • 心不全の本体は左室充満圧の上昇(左室拡張末期圧ではない)あるいは左房圧の上昇と理解できます.よって肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure: PCWP)と強い関連を有する指標が心不全管理には有用です.
  • どうやら身体所見(自覚症状を含む)の中では頸静脈の膨隆(≠怒張/回避したい用語)が一番強い関連だったようです.これは個人的な肌感覚にも合っているかなと思います(もっともPCWPは滅多に測定していませんが...)

👀 おまけ
  • 上記論文はDr. Mark Draznerのグループからの報告です.ドレズナー先生はテキサス大学サウスウェスタン医療センターの内科教授で,心臓病学の臨床主任です.
  • 専門は心臓移植を含む重症心不全の治療などと思われます.特に心不全症例での右房圧と左房圧の関係では他の追随を許さない程の業績を挙げられています.
  • ただしX(旧Twitter)ではフォロワーが3,112名と寂しい限りです.あまり発言されていませんが... 2017年3月から計765ポストで,最近では月に一回くらい
Xより(@MarkDrazner)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-28

パワフルな静脈拍動

息切れで来院した症例

🐣 解説
  • 右側に加えて左側にも拍動あり
  • ただし拍動は陥凹なので静脈性
  • 吸気負荷で隆起に変化(矢印)
  • 呼吸変動の存在も静脈性に合致
  • しかし用手的圧迫では消失せず
  • 最終的な診断は非代償性心不全

🐥 呟き
  • 頚部拍動には動脈性と静脈性があります.静脈性を示唆する所見としては右側優位,陥凹パターン,呼吸変動あり,圧迫で消失などがあります.逆に動脈性なら,左側でも明瞭,隆起パターン,呼吸変化なし,圧迫されずなどです.
  • 本例では右側に加えて左側でも拍動が目立ちましたが,陥凹パターンで呼吸負荷による変化も伴っていたため視診だけで静脈性(内頚静脈)と診断できました.しかし強めの拍動で圧迫にも負けないチカラ強さには驚きました 😮
  • 右側では稀ながらパワフルな静脈拍動を経験しますが,左側では珍しいと思います.通常このような症例では座位であっても外頸静脈が怒張(注意を要する用語:過去の投稿)していることが多いのですが(自験例)... 奥深い

(松下記念病院 川崎)

2024-11-25

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-21

たかがリックサック,されど...

慢性左心不全例の定期受診

👜 解説
  • リックサックを背負い診察室に入室(前半)
  • 鎖骨上窩に僅かながら陥凹を認めた(矢印)
  • リックサックを下ろすと拍動は消失(後半)
  • 問診で無理すると息切れがあることが判明

🍙 追加コメント
  • 本例は持続性心房細動を伴うHFpEF症例で,安定期でもBNP値は500 pg/ml前後と高値.リックサックを背負うという行動は仕事であると同時に,静脈の圧迫で血流を変えている可能性あり?
  • 本例がリックサックをして来院したのは初めてなのでそれとなく聞いてみた.すると診察後にお米を買ってリックサックにいれて帰る予定であることが判明.それはオススメしないと伝えた.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-18

運動誘発肺胞出血
Exercise-induced pulmonary hemorrhage (EIPH)

  • 競走馬で有名な病態でレース後は半数以上に出現する
  • 重症例ではレース後のサラブレットで鼻出血を認める
  • 馬は運動でRAP>60mmHg,PCWP>70mmHgに達する
  • ただしEIPHの有無でRAPやPCWPには有意差なし(下図)
  • 予防にはフロセミドが有効(ただし日本では禁止薬物)
  • ヒトでもマラソンなどを契機に発症例の報告あり(※)

サラブレッド馬の内視鏡的評価(トレーニング終了60分後)

- 競走馬の負荷中の心内圧 -

😋 独り言
  • 先日の心不全学会での講演(杉本匡史先生)で知った病態です.とても興味深かったため調べてみました.こんなにも高圧になった時の頚静脈拍動ってどんなんだろう? 動脈との鑑別は容易ではないと予想します.
  • でもさすがサラブレット 🐎 あらゆる点でヒトとは比べ物にならない循環系でしょうか.だから運動耐容能も桁違いです.健常若者 11.4 METs,オリンピック選手 22.8 METs,サラブレット 57 METs(以前の投稿)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-14

キャノンは見えずとも...

ふらつきを訴える症例

🚑 現場実況
  • 本例は前医の心電図を持参されていたため,診察時には3度房室ブロックが既に分かっていました.さっそく大砲A波(Cannon a wave)を確認しようとしましたが,予想に反してあまりはっきりしません.
  • そこで吸気負荷(前負荷増大)を行ってみました.すると頚部がみるみる膨らんできて(通常のクスマウル徴候よりもはるかに大)ちょっとびっくり 😧 患者さんも苦悶の表情だったので慌てて負荷を解除

 👽 つぶやき
  • 本例でキャノン波が不明瞭であった理由は不明ですが,やはり心房機能の低下でしょうか(特にブースター機能>リザーバー機能の障害?)
  • 完全房室ブロックになると,通常では聞こえないような小さいⅣ音が認識できることが少なくありません(Ⅰ音と分離するため:自験例).
  • しかし本例ではⅣ音は聴取されませんでした(心房の機能低下に合致).心房細動の既往はありませんが,将来発生する確率が高いかも...

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-11

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-07

心音クイズ(Q5・Q6)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズの第三弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回は拡張期雑音を呈した2症例で,5領域(2R, 2L, 3L, 4L, 心尖部)の心音+2領域の心音図です.心音の高みを目指してかなり攻めてみました.
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2025年1月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


(松下記念病院 川崎達也)

2024-11-04

👴 歴史クイズ

(CC BY 4.0)



(松下記念病院 川崎達也)