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2022-11-07

あなたは猫派? 犬派?

  • 循環器内科医にはネコ派が多い気がします.飼い主が忙しくて散歩に連れて行かなくても文句を言わないから?
  • ネコの心音で興味深い論文が最近,2編出版されたのでまとめておきます.ネコを飼っておられる方は挑戦?

Ferasin L, et al. Prevalence and Clinical Significance of Heart Murmurs Detected on Cardiac Auscultation in 856 Cats. Vet Sci. 2022 Oct 13;9(10):564.

  • 結語 心雑音特性 (タイミング・音量・および最大強度のポイント) が潜在的に心疾患の存在を予測できる.
  • 個人的感想 仰せの通り 🙇 もっと精進せねば


Howell KL, et al. Prevalence of iatrogenic heart murmurs in a population of apparently healthy cats. J Small Anim Pract. 2022 Aug;63(8):597-602.

  • 結語 Iatrogenic heart murmurs(おそらく臨床的な意義のない雑音)は猫によくみられる所見であり,高齢のやせた猫で有病率が増加しいる.特に胸壁を少し押して発生する柔らかい収縮期の右心系雑音では医原性雑音を考慮
  • 個人的感想 聴診の一致率がすごい 😲 下図


松下記念病院 川崎)

2022-11-03

論文 🏆 if you miss the goiter…😱

  • 当院の初期研修医 熊田先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の息切れで受診 ➜ 心エコー図で肺高血圧(推定収縮期圧50 mmHg)
  • 頻脈はないが甲状腺の軽度びまん性腫脹あり ➜ 最終的にバセドウ病と診断
  • 心肺疾患や血栓症なし ➜ 肺高血圧症のダナポイント分類第1群または第5群
  • 本例は甲状腺治療のみで肺動脈収縮期圧は経時的に低下して最終的に正常化


😀 臨床現場
  • 肺高血圧のガイドラインには第5群として①血液疾患(慢性溶血性貧血,骨髄増殖性疾患,脾摘出),②全身性疾患(サルコイドーシス,肺組織球増殖症,リンパ脈管筋腫症),③代謝性疾患(糖原病,ゴーシェ病,甲状腺疾患),④その他(腫瘍塞栓,線維性縦隔炎,慢性腎不全,区域性肺高血圧)の4つが記載されています.
  • 本例では「甲状腺疾患をたまたま合併した第1群肺高血圧」(共に若い女性に多い)と「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」が考えられました.甲状腺の治療と並行して,肺高血圧の特異的薬物治療(プロスタサイクリン経路・エンドセリン受容体拮抗薬・一酸化窒素経路)の導入の要否を判断する必要があります.
  • 本例では(患者さんと協議の上)甲状腺治療のみを開始しました.肺高血圧が特異的薬物治療なく消失したため,「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」と考えられました.肺高血圧と甲状腺疾患が合併した場合,17症例中16例で甲状腺治療のみで肺高血圧が正常化したという(すごい😮)報告があります(Angiology 2006;57:600-6).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-31

耳垂皺の病理

  • 耳たぶの皺(フランク徴候/Frank's sign)と動脈硬化の関連を検討した報告は散見されます(過去の投稿).しかし耳垂の病理学的に検討した論文はほとんど見かけません.
  • 先日たまたま "The Histological Basis of Frank's Sign" という魅力的なタイトルの研究を見つけました.あまりクリアカットな結果ではなかったようですがまとめておきます.

フランク徴候(白矢印)部分には,間質の線維化はないが筋弾性線維症を伴うコルク栓抜き様のねじれた動脈血管がある(黒矢印).A:HE染色(×200),BとC:その拡大

皺部分の組織学では末梢神経は好酸球性封入体を伴うウォーラー様の変性を示す.A:HE染色(×40),B;拡大(×400)

本論文の結語(日本語訳)
  • 我々のデータは,心筋の形態学的変化と耳たぶのしわの存在との間に有意な相関関係があることを示唆する.心不全における低酸素/再酸素化の提案されたモデルと,観察された変化の原因である耳小葉の生理学的に低い酸素飽和度と発生学的発達は,フランク徴候の発達と臨床的に観察可能な変化との相関を説明する最初のモデルである.

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-27

"Locomotive" pulse ”機関車” 脈

CTで偶然,深部静脈血栓を指摘された症例の上腕

😋 解説
  1. 上腕動脈の力強い規則正しい拍動を視認
  2. 肘部の屈曲に伴って動脈の蛇行が明瞭化
  3. 1回拍出量の増加した大脈・速脈を反映
  4. 心エコー図で重症の大動脈弁逆流を確認

👶 深掘り
  • これは水槌脈(Water-hammer pulse),反跳脈(Bounding pulse),コリガン脈(Corrigan pulse)などと呼ばれています.最近,機関車脈Locomotive pulse)とも呼ばれていることを知りました.
  • 確かに力強い拍動は蒸気機関車のパワーを感じさせます.初めての記載はDr. Toddのようですが(The British Medical Journal Vol. 1, No. 58, Feb. 8, 1862),同論文にはDr. Toddが一体誰なのか記載がありません.
  • 論文にDr. Toddと記載するだけで皆が認識できるなんすごいと思います.予想では皮膚科学の大家でロンドン大学の初代教授 Anthony Todd Thomson(1778–1849)ですがミドルネームって変かも?

松下記念病院 川崎)

2022-10-24

心尖拍動の収縮期陥凹

慢性左心不全の症例(端座位)

🐦 解説
  • 左乳輪の下内側に明瞭な心尖拍動 ➜ 乳輪外側でなく心拡大とは言えず
  • 乳輪の上にも僅かに拍動あり ➜ 2肋間以上の拍動で心拡大の可能性あり
  • 本例の心尖拍動は脈触知や聴診との組み合わせで収縮期の陥凹と判明
  • 陥凹時間は十分に長いため抬起性の拍動(ただし本例に心肥大はなし)

🐳 ひとり言
  • 心尖拍動の収縮期陥凹(systolic retraction)は収縮性心膜炎で出現することが有名ですが,臨床現場では稀で固執すると診断を誤ります(自験例).
  • 本例にように通常の左心不全に加えて右心の反映(自験例),肥大型心筋症(自験例),慢性閉塞性肺疾患(自験例)など様々な病態で出現します.
  • 代表2疾患は限局した収縮性心膜炎と右室拡大を伴う三尖弁逆流(特に僧帽弁狭窄合併)ですが,健常者にも少しは生じると報告されています().

松下記念病院 川崎達也)