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2022-12-12

ポーランド症候群 Poland's syndrome

  • 最近,久しぶりに(正確には2年1月ぶりに)ポーランド症候群の症例をTwitterで見かけました(ココ).以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容ですが心臓フィジカル広場にもアップしておきます.

  1. 片側胸筋の発育不良や欠損,肋骨・肋軟骨異常,合短指・短指症などを特徴とする先天性疾患
  2. 英国の外科医 Sir Alfred Poland(1822–1872)が初報(Guy's Hospital Reports 1841;VI:191–3
  3. 頻度は2万~3万人に1人/75%が男性で75%は右側に出現/治療は豊胸術などの形成外科手術


(Indian J Hum Genet 2014;20:82–4/本例は左が患側)

  👾 トリビア調査隊
  • Sir Alfred Polandはロンドン生まれ・ロンドン育ちでポーランド人ではありません.ポーランドという姓は英語化されたアイルランド姓で,アイルランド以外では英語とドイツ語が起源のようです().ちなみにポーランドの国名は西スラヴの部族ポリャーネ族が由来で,ポリャーネの由来はスラヴ祖語でfieldを意味するようです().本邦にも日本という苗字の方がおられることを今回初めて知りました.読み方はひのもと・ひもと・にほん・にっぽん・やまとで,およそ150人の方がこの貴重な姓を持っておられるようです().

松下記念病院 川崎達也)

2022-12-08

首問題:動脈 vs 静脈

収縮期雑音で循環器内科を紹介受診した症例(端座位)

🍙 解説
  • 頸部に周期的拍動あり ➜ 動脈性あるいは静脈性の判断が必要
  • 動脈性なら頸動脈のコリガン脈 ➜ 大動脈弁逆流(拡張期雑音
  • 静脈性なら頸静脈のランチシ徴候 ➜ 三尖弁逆流(収縮期雑音
  • 外頸静脈は見えず+左側にも拍動あり(矢印)➜ 動脈性を示唆
  • 本例の最終的な診断は大動脈弁逆流による頸動脈のコリガン脈

😗 余談
  • 頸静脈拍動は陥凹することが多いのですが,中心静脈圧が高度に上昇すると陽性波を形成することがあります(典型例).陽性波が動脈性か静脈性かは拍動の触診で鑑別できますが,なんとか視診のみで診断したいといつも思っています(本ページでは様々な方法で鑑別に挑戦しているので検索窓から探してみてください)
  • 本例のポイントは収縮期雑音として紹介受診した点です.臨床現場では,大動脈弁逆流例が拡張期雑音で紹介されてくることはむしろ稀だと思います.拡張期雑音はとても見逃しやすい音です.本例も大動脈弁狭窄はありませんが,相対的な大動脈弁狭窄によると思われる収縮期雑音が目立ちました(厳密には往復雑音でした)

松下記念病院 川崎達也)

2022-12-05

👴 歴史クイズ




松下記念病院 川崎達也)

2022-12-01

これなら安心

拡張型心筋症+アブレーション後の症例
診察前の心電図検査で心房細動が再発していることが判明した

🐦 解説
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度〜高度上昇なし
  • 左上肢の挙上でも拍動は視認せず ➜ 中心静脈圧の中等度の上昇なし
  • 息切れなどの心不全症状なく聴診でもⅢ音を聴取せず ➜ 1月後再診

🐳 独り言
  • 以前は吸気負荷で内頸静脈の拍動が出現しなかったら(広義のクスマウル徴候陰性),「これなら一安心」と判断していました.しかし最近では心不全(新規または再発・増悪)が疑われる症例では,吸気負荷が陰性の場合に吸気と左上肢挙上の同時負荷を行うようにしています.
  • 実は本症例は診察室に入ってきて椅子に腰掛けた直後の検査で,左上肢挙上負荷は陽性でした.しかしスマホを取り出して撮影許可を得た後の上記記録では陰転化していました.1〜2分の座位で視認できなくなる静脈圧の上昇なら,急いで介入しなくても大丈夫だろうと判断しました.

松下記念病院 川崎達也)

2022-11-28

🏆 論文:ちょっとフィジカルとは違いますが…

🎉 当院の循環器内科で経験した症例が NEJM に掲載 🎉

  • ウェレンス症候群の1例ですがポイントは心カテ待機中にST上昇
  • 緊急カテーテル検査では前下行枝近位部の完全閉塞でした(下図)
  • 最近では高度狭窄よりも血栓が関与した病態と考えられています

😀 追加コメント
  • 命名はオランダの循環器内科医 Wellens らの報告に由来します(Am Heart J 1982;103:730-6).よって英語表記はWellen's syndromeではなくてWellens' syndromeあるいはWellens syndromeが正しいと思われます.しかしWellen's syndromeの誤記も散見されます(一流誌の実例:Circulation 2019;140:1851-2).
  • 日本語の発音ではェレンスと呼ばれることが多いと思います.でもオランダ語ではヴェレンスと濁ることを友人から教えてもらいました(例:).それ以降,当院でも研修医に濁音のェレンス症候群と教えていました.しかしNEJMのAudio Summaryではェレンスと濁っていないことを同じ友人から教えてもらいました.よって最近は再度ェレンスと指導しています.
  • 本論文は今年の2月に投稿して4月に修正の返事がありました.たった150語なのに文言の修正を計3回,図の修正を計3回(解像度など)も指示されました.8月に採択の連絡があり9月に掲載です.当院の戦績(NEJMイメージ論文)は25戦して3勝22敗で採択率🏆12%です.大学病院や有名病院でないわりには善戦かも...😅

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)