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2025-12-29

今週の一枚 🎯

  • 松下ERランチ・カンファレンス」の名物に「今週の一枚」があります.実際に当院で経験したその週で最も印象的な症例の画像コーナーです.
  • 今回は身体所見(+ベットサイド心エコー)で診断しても治療に悩む(悩んだ)例です.本ページとも関連すると思われるので共有しておきます.

呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)



松下記念病院 川崎)

2025-12-25

チアノーゼ Cyanosis

  • 皮膚や粘膜の青紫色変化で毛細血管内血液の還元Hb濃度≧5 g/dlで出現
  • 低酸素血症に特異的ではない(例:CO中毒の低酸素血症では出現せず)
  • 口唇や口腔粘膜,鼻尖,耳朶,指先ほかに出現(毛細血管血液色を反映)
  • 総Hb濃度の影響が強い(貧血で出現しにくく赤血球増多で出現しやすい)
  • 中枢性と末梢性(下表),ヘモグロビンの異常による血液性に大別できる
  • 血液性チアノーゼはメトヘモグロビン血症や乳児メトヘモグロビン血症他


中枢性チアノーゼ 末梢性チアノーゼ
酸素飽和度 動脈血
  • 低下(基準値 100%)
  • 正常(基準値 100%)
毛細血管内血液
  • 低下(基準値 85%)
  • 低下(基準値 85%)
静脈血
  • 低下(基準値 70%)
  • 低下(基準値 70%)
分類
  • 呼吸機能障害(泣き入りひきつけやARDSなど)
  • 右左シャント(Fallot四徴アイゼンメンゲル症候群など)
  • 肺胞内酸素分圧低下(高地環境)
  • 末梢循環不全(低心拍出症候群や寒冷曝露,レイノー現象など)
  • 動脈閉塞性疾患(動脈性塞栓症など)
  • 静脈閉塞性疾患(静脈瘤や血栓性静脈炎)
出現部位
  • 全身に出現
  • 指尖や鼻尖などの末端に限局(粘膜には認めないことが多い)



😐 おまけ
  • 上半身と下半身でチアノーゼの程度が異なると解離性チアノーゼDifferential cyanosis
  • 上半身優位のチアノーゼ ➜ 完全大血管転位(肺循環血液が動脈管を介して下行大動脈
  • 下半身優位のチアノーゼ ➜ アイゼンメンジャー化 or 大動脈縮窄症を伴う動脈管開存症

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-22

シーソー

動悸と息切れで来院した症例(座位)

😗 解説
  • 右頚部に隆起性の拍動あり(矢印)
  • 左側にも隆起性の拍動あり(矢頭)
  • 右側の隆起は左側より先行している
  • よく見ると右側拍動は隆起後に陥凹
  • 左側の拍動は隆起のみ(陥凹なし)
  • 心エコー図では重症の大動脈弁逆流
  • 最終診断はARによる非代償性心不全

💫 追加コメント
  • 右側隆起は前収縮期で用手的に容易に圧迫 ➜ 頚静脈の増高a波
  • 左側隆起は収縮期で用手的圧迫は困難 ➜ 頚動脈のコリガン脈
  • 注意深く診察すれば視診だけで両者の鑑別は可能と思われます
  • そしてこの組み合わせならARの非代償性心不全と診断できます

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-18

知りませんでした…

  • 最近,身体所見に関する知られざる(少なくとも投稿者には)歴史を知ったので本ページでも共有します(Rev Port Cardiol (Engl Ed) 2020;39:233-6
  • バーロー症候群で有名なJohn Barlow先生ですが,真の貢献は僧帽弁逸脱での聴診(収縮後期雑音とクリック)の重要性を解明したことだそうです.
  • 心エコーがまだない時代に,病歴聴取と身体診察に費やす時間と忍耐力で際立ち,複数のベルと膜を備えた自身の聴診器を非常に誇りとしていました.

Professor John Barlow - The Legend

導入部のAI翻訳: ジョン・バーロウ教授は、バーロウ症候群として知られるようになった僧帽弁不全のメカニズムを発見したことで、心臓学の巨匠の一人としての地位を確立しました。心臓学界では、症候群、疾患、脱出症について大きな混乱があります。バーロウ教授は僧帽弁脱出症の特徴を明らかにした最初の一人ですが、彼の真の貢献は「収縮後期雑音と収縮中期後期クリック音の重要性」を解明したことです。彼はこれらの音が僧帽弁のメカニズムによるものとしました。それ以前は、これらの音は心膜癒着など心臓以外の原因によるものと考えられていました。この名で発表された論文は、当初は「原因が僧帽弁のメカニズムによると主張するのは極端すぎる」という理由で当時の主要な科学雑誌に拒否され、友人が編集していた Maryland State Medical Journal に 1963年2月にようやく掲載されました。その直後(1963年10月)にAmerican Heart Journalに「収縮期後期雑音の重要性」というタイトルで、7人の患者の聴診所見が記載された論文が発表されました。


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-15

心音クイズ(Q13・Q14)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズのシーズン2 第二弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏 レイアウトも一新).今回は臨床現場でしばしばお目(耳?)にかかる2症例です.もっとも少しひねりを効かせた(聴かせた?)症例です 😉
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2026年2月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は初回のみ簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-11

ゲルハルト様徴候 Gerhardt-like sign 

意識障害で搬入された症例


👺 解説
  • 少し荒めの呼吸が目立つ(腹式)
  • 呼気時に左季肋部に拍動(矢印)
  • 本例は甲状腺の腫大と雑音あり
  • 最終的な診断は甲状腺クリーゼ

👽 コメント
  • 大動脈弁逆流症では左上腹部に拍動を認めることがあります(ゲルハルト徴候/Gerhardt sign).その機序は大脈に伴う脾臓の収縮期拍動です.同様に肝臓の拍動はローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼ばれています.
  • 本症例で認めた左季肋部の拍動は,甲状腺機能亢進症による大脈で生じたゲルハルト(様?)徴候でしょうか? 右季肋部の拍動は不明瞭ですが,触診では肝臓の拍動(ローゼンバッハ[様?]徴候)もあるような気がしました😉 

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-08

フィジカルクイズ(No. 33 & 34)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-04

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-01

学習アプリの効果

  • 面白い論文が出版されたのPICO(ピコ)形式で共有します(Nurse Educ Pract 2025:89:104620

    1. P – 看護学生,モバイルアプリケーションを用いた心血管身体の学習効果
    2. I – ランダム化比較試験,42名をアプリ群、40名を対面指導群に割り当て
    3. C – 学生の学習効果,自己学習能力、知識、学習満足度を両群間で比較
    4. O – アプリ群でスキルパフォーマンスは有意に向上した.他は有意差なし

😌 独り言
  • アプリが身体所見の学習に有用であることは言を俟ちません.いつでも・どこでも・だれもが利用できるからです.しかしその効果のエビデンスは意外にも少ないような気がします.
  • アプリやWEBコンテンツの開発者の一人としてはこのような論文をとても嬉しく思います.投稿者も様々なコンテンツを公開しているのでよろしければご覧ください(松下ハート塾

松下記念病院 川崎達也)