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2026-07-30

時には外頚静脈も活用

体重が少し増加した心不全例(座位)

😐 解説
  • 外頚静脈の明瞭な上下運動あり(矢頭)
  • 吸気保持で拍動は消失し膨隆(=怒張)
  • 当日のBNPは前回の700から1300に増加
  • 本症例はDCMで心不全の悪化と診断した
  • 利尿薬を追加して早めに再診を予定した

😶 追加コメント
  • 心不全の評価で用いる頚静脈は、外頚静脈ではなくて、内頚静脈です(もちろん右側)。これは解剖学的な理由です(外頚静脈は右房と直線的関係でなく、有効な逆流防止弁があり、胸鎖乳突筋の緊張の影響を受ける)。
  • ただし本例のように心周期に伴う拍動が明瞭な場合は、中心静脈圧の推定(心不全判定)に用いてもOKです。あるいは呼吸変動(自発呼吸に伴う変動あるいは深吸気負荷に伴う変化)がある場合も、判定可能と思われます。
  • 本例では外頚静脈に目が行きますが、よく見ると内頚静脈の拍動も十分に視認できます。通常呼吸時には鎖骨上窩で陥凹があり、吸気負荷後は頚部の中央(外頚静脈を含む)が面として周期的に陥凹しています。

松下記念病院 川崎)

2026-07-27

AI 聴診器の研究から

TRICORDER 試験 👀 Lancet 2026;407(10529):704-15
  • 背景: 心血管疾患の早期発見は、世界的な公衆衛生上の優先事項である。人工知能(AI)搭載聴診器は、心不全、心房細動、弁膜症(VHD)のポイントオブケア検出において、優れた性能特性を発揮する。
  • 方法:英国のプライマリケア診療所を、介入群(日常診療におけるAI聴診器の使用に関するトレーニングと導入)または対照群(日常診療)に1:1でクラスター無作為化した。心臓検査中、AI聴診器は15秒間の単誘導心電図と心音図信号を記録し、3つのAIアルゴリズムに入力して、左室駆出率低下(≤40%)、心房細動、およびVHDの有無に関する二値予測を返した。
  • 結果:205の診療所がランダムに割り当てられた (介入群に96施設 [登録患者 701,933人]、対照群に109施設 [登録患者851,242人])。介入群の診療所では、心不全の検出はグループ間で差がなかった (IRR 0.94 [95% CI 0.86-1.02])。地域ベースまたは病院ベースの診断に差はなかった (p>0.05)。 
  • 解釈: AI聴診器を日常的なプライマリケアに導入しても、導入後12か月経過しても心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった。ただしAI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の有意な上昇と独立して関連していた。


😑 独り言
  • 少し分かりにくい結果かな~と思います。特に「AI聴診器の使用は、心不全、心房細動、弁膜症の検出率の上昇と関連するが、心不全の検出率や地域ベースの診断率は有意に増加しなかった」という点です。抄録の解析はIntention-to-treat analysisですが、図のPer-protocol adjusted incidenceでは差がありそうです(両解析法の違い
  • これに関する筆者らのコメントAI訳 →「アルゴリズムの性能は良好であったにもかかわらず、3疾患の検出率の向上は集団規模では達成されず、使用状況に依存することが明らかになった。また、実世界での導入において克服すべき大きな課題、例えば低い利用率や関連するワークフローの不整合なども明らかになった。」…なるほど(!?)

💁 AI(人工知能)に関する過去投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

松下記念病院 川崎達也)

2026-07-16

ここまでは視診で診断

2週間前からの動悸と息切れで来院

🔒 解説
  • 両側の外頚静脈が隆起(呼吸変動なく怒張)
  • 頚部に拍動ありそう → 陥凹の疑い(矢頭)
  • 左だが内頚静脈の視認なら非代償性心不全
  • その拍動は規則正しく早い(>100回/分)
  • 病歴からも頻拍誘発性の心筋症が疑われた
  • 最終診断は2:1伝導の心房粗動による心不全

😶 独り言
  • 座位での外頚静脈の視認は必ずしも心不全とは言えません。頚部の筋緊張等で静脈灌流が阻害されることがあるためです。しかし本例のように両側で怒張している場合は、中心静脈圧の上昇が疑われます。なお怒張という用語は注意を要しますが(過去の投稿)、本例ではOKです。
  • 本例の頚部の拍動は内頚静脈の陥凹です(陥凹時間<隆起時間)。しかし一見、隆起か陥凹かの区別が難しいかもしれません。これは特に頻脈症例で多いと思いますが、こういう場合は右側よりも左側の方が分かりやすい症例があります。なお隆起なら頚動脈拍動との鑑別が必要です。
  • 動脈か静脈かの鑑別は触診をすればすぐに分かると思います。しかしそこはじっと我慢して、視診でどこまで診断に迫れるかが腕の見せ所です。頚静脈拍動から不整脈の鑑別も可能ですが(過去の投稿)、そこはフロッグサインを除きあまり拘らないようにしています(苦い思い出)。

松下記念病院 川崎達也)

2026-07-09

フィジカルでここまで分かる

息切れを訴える症例(座位)

🔎 推理
  • 座位で右頚部に周期的な隆起を認める(矢頭)。左側ではあまり隆起が目立たないことより、頸動脈の拍動(コリガン脈)よりも頚静脈の拍動(ランチシ徴候)と考えられる。よって中心静脈圧は高度に上昇しているため、非代償性心不全と診断できる。
  • 次に心尖部を確認すると複数の肋間で心尖拍動を視認するため(矢印)、心拡大が疑われる。さらに男性であるにも関わらず、乳房が発達している(女性化乳房の疑い)。つまりスピロノラクトンなどミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の服用が疑われる。
  • さらに左前胸部に埋め込まれているデバイスは通常よりも大きいため、CRTD(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)等と思われる。これらすべてに合致するのはHFrEFで、肋間筋の萎縮も考慮すると悪液質に陥ったステージDの重症心不全の疑い。

🎩 独り言
  • 上記の予想はすべて正解です。まるでシャーロック・ホームズの推理でしょうか? 彼の推理は微細な事実の観察と、そこから論理を組み立てる推論の組み合わせです(AI解説)。
  • 身体所見も少し慣れれば、同じことができるかもしれません。以前にもフィジカルでここまで分かったという症例をアップしているので、よろしければご覧ください(ココ)。

松下記念病院 川崎達也)

2026-07-02

👀これから眼にも着目

  • 重度の三尖弁逆流(TR)による眼球の収縮期突出の報告を読みました(Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395)。これまでの文献上の報告はわずか7例で、本稿では新たに2例を報告しています。
  • この所見の初報は、エモリー大学のJ. Willis Hurst(1920 – 2011)らのようです(Am J Cardiol 1970 Oct;26(4):351-4)。重鎮ハースト先生は心臓病学のテキスト(通称Hurst's The Heart)などで高名
  • 同眼球所見の機序は、頚静脈の収縮期陽性波(Lancisi徴候)と同様に、TRによるCV波と思われます。大動脈弁逆流症に伴う収縮期眼球突出(Pulsatile pseudo-proptosis)の方が少しだけ有名?
  • 個人的にはTRに伴う”こめかみ”の拍動を経験しています(勝手に命名:こめかみサイン)。論文で前額静脈の拍動を見たことがあります(過去の投稿)。これからはTRがあれば眼にも着目しなくては…

心不全で入院した44歳男性(平均右房圧23 mmHg)

Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395/残念ながら動画なし)

💁 三尖弁に関する過去の投稿は コチラ(PCなら右欄からも選択可能)

松下記念病院 川崎達也)

2026-06-29

腋窩は診てませんでした😔

  • 重症の大動脈弁逆流症によるフィジカルの短報を見かけました(Eur Heart J Case Rep. 2026 Feb 6;10(2):ytag074)。大脈(速脈)を反映する身体所見で、水槌脈(Water-hammer pulse)や反跳脈(Bounding pulse)、コリガン脈(Corrigan pulse)などと呼ばれています。
  • これは特に目新しい所見ではなくて、このブログにも何度も登場しています(ココ)。本例がEur Heart J Case Repに掲載された理由は、場所が腋窩だからかな~と予想します。そういえば僕自身も腋窩を確認したことはありませんでした...... ( 〃..)ノ  ハンセイです

📗全文(AI訳)と図
  • 78歳の男性が、長期間にわたる進行性の呼吸困難の既往歴の後、起坐呼吸と安静時の呼吸困難を主訴として救急外来を受診した。身体診察では、うっ血性心不全の兆候、広い脈圧(144/43 mmHg)、心尖拍動の側方偏位、および大動脈弁逆流を示唆する高音の漸減性早期拡張期雑音が認められた。特に腋窩動脈において、顕著で規則的な末梢動脈拍動が認められ(ビデオSA)、急速な上昇と突然の虚脱を示した。この目に見える水槌脈(ワトソン脈とも呼ばれる)は、大動脈弁逆流の特徴である。これは、大動脈の急激な拡張を伴う一回拍出量の増加、それに続く大動脈から左心室への血液の逆流による拡張期虚脱の誇張によって生じる。心エコー検査により、重度の大動脈弁逆流に加え、著明な左心室拡張および収縮機能障害が確認された。

松下記念病院 川崎達也)

2026-06-25

安静陽性なら負荷は必須ならず

先天性心疾患術後例の息切れ

🔒 解説
  • 胸部正中に手術瘢痕(問診でファロー四徴症と判明)
  • 座位で内頚静脈の陥凹(矢頭)→ 非代償性心不全
  • 吸気負荷で鎖骨上窩の内頚静脈拍動は一見、不明瞭
  • しかしよく見ると頚部中央に拍動が出現(矢印群)
  • 下腿浮腫はなく、心音は汎収縮期逆流性雑音+Ⅲ音
  • 最終診断は亜急性の僧帽弁逆流(腱索断裂の疑い)

🔓 独り言
  • 安静座位で頚部に視認する内頚静脈の拍動は高度の中心静脈圧の上昇を示唆します。この代償が破綻した状態が、吸気で改善することは(経験的にも)ないと考えます。
  • しかし本例のように、吸気で拍動が不明瞭になる症例を稀ながら経験します。その多くは頚部の筋肉(特に胸鎖乳突筋)の緊張に伴う静脈拍動の不明瞭化と考えます。
  • ご存じのように下腿浮腫は心不全で出現する身体所見の一つですが、特異性はありません。また本例のように比較的急な経過で増悪した心不全では、下腿浮腫は稀です。

松下記念病院 川崎達也)

2026-06-11

鶏と卵の関係?

息切れ増悪で呼吸器内科から紹介(座位)

🐣 解説
  • 目立つ胸鎖乳突筋はCOPDに合致
  • その奥に右内頚静脈の陥凹(矢印)
  • 吸気負荷で拍動上縁の上昇(矢頭)
  • 診断は心不全の合併(COPD安定)

🐔 独り言

松下記念病院 川崎達也)

2026-05-28

意外な事実:ヒル徴候

- 労作時の息切れで来院した症例 -

👀 解説: ヒル徴候 陽性(Positive Hill's sign)
  • ABI(足関節上腕血圧比)の低下なし(高値) 
  • 血圧値は上肢より下肢で著増(>60 mmHg) 
  • 最終診断は重症 大動脈弁逆流による心不全

😲 ヒル徴候の機序💦
  • 重度の大動脈弁閉鎖不全症と診断された5人の患者において、動脈内圧測定では大動脈と大腿動脈、または腋窩動脈と大腿動脈のいずれにおいても、収縮期圧に著しい差は認められなかった。上肢の非侵襲的血圧測定では、腋窩動脈の測定値と良好な相関が認められた。しかしながら、下肢の非侵襲的測定では、動脈内測定値よりも収縮期圧が著しく高く、3人の患者では大腿カフの圧力を高くしても膝窩動脈上のコロトコフ音を消失させることができなかった。つまりヒル徴候は血圧計による下肢血圧測定のアーチファクトで生理学的根拠はない

 - 別の研究 -
AR 20例とコントロール50例の血圧(正中動脈と大腿動脈)

💁 ヒル徴候に関する過去投稿は コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2026-05-18

論文 🏆 低灌流の身体所見パート2

  • 当院で行った臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kawasaki T. Peripheral Perfusion Index as a Marker of Hypoperfusion in Heart Failure. Cardiology 2026 Feb 9:1-10. Epub ahead of print. (PMID: 41662304
  • 以前に当科から,心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無はいずれも,Nohria-Stevenson分類と同程度のリスク分類に利用できることを報告(Cardiology 2025 May 5:1-11
  • 今回は簡便かつ客観性のある指標 Perfusion Index (PI) を用いた検討です.PIはパルスオキシメータの拍動性血流成分と非拍動性血流成分の比から算出される指標で,心不全例でのリスク評価は初めてと思われます.

- 心不全例の末梢PIと心血管事故 -

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2026-04-30

第90回 日本循環器学会学術集会より

📢 心音に関する臨床研究

演題OJ01-8 Utility of a Digital Stethoscope for Severity Assessment of Aortic Stenosis(奈良県立医科大学)
  • 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)外来を受診した大動脈弁狭窄症(AS)患者をデジタル聴診器で評価し、デバイスで割り当てられたAS重症度と心エコー図の重症度を検討。デジタル聴診器はASの重症度を判定するのに有用であり、専門医への紹介を検討する際に、心臓専門医以外の医師にとって実用的なトリアージツールとして役立つ可能性がある。(投稿者追加:使用した聴診器名とその判定基準の記載なし)

演題PE019-6 Simple Auscultation of the Heart for Detecting Valvular Heart Disease(大阪府、松下記念病院)
  • 標準5点聴診とシンプル聴診を、心エコー検査と心音図を行った992人で検討。5点で心雑音が認められないことは、VHDを除外する特異度75.2%、感度58.9%。左胸骨第2縁と心尖部(特異度74.7%、感度59.2%)または左胸骨第3縁と心尖部(特異度74.9%、感度59.1%)に限定した場合も、同様の診断能。(投稿者追記:当院からの英語ポスター発表、演者は初期研修医で発表前に論文完成👍)

演題LBCT3-5 Evaluation of the Diagnostic Utility of Pre-Echocardiographic Digital Auscultation: A Prospective Comparative Study(香川大学)
  • 心エコー検査を受ける240人の患者で、AI分析を行うスーパー聴診器を使用して聴診を先に行い、検査者に結果が開示されるグループと、事前の聴診なしで心エコー検査を受ける対照グループに1:1で割り当て。スーパー聴診器は、収縮期駆出雑音(大動脈弁狭窄症)、逆流雑音(僧帽弁逆流症)、拡張期雑音(大動脈弁逆流症)を、なし~軽度または中等度~重度に分類した。主要評価項目全体で有意差は認められなかった。しかし、聴取可能な心雑音のある患者では、聴診先行群で大動脈弁逆流症の評価が有意に改善された。

演題CRJ27-6 Experience with the Use of an AI-Assisted Digital Stethoscope in Combination with Echocardiography(香川大学)
  • 心エコー検査の前に実施するAI支援デジタル聴診の臨床的有用性を評価。対象は心臓内科および心臓血管外科から心エコー検査のために紹介された患者。デジタル聴診によって得られた弁膜症の診断を心エコー検査の結果と比較では、僧帽弁逆流症と大動脈弁狭窄症については、デジタル聴診は心エコー検査と一致する診断結果。ただし、僧帽弁狭窄症はこの方法では検出されず。(投稿者追記:検討数や診断能などの数値は未記載)

演題PJ67-4 Detection of Moderate or Greater Aortic Stenosis Using a Deep Learning Model with Digital Phonocardiogram in a Multicenter Validation Cohort(AMI株式会社, 熊本大学病院)
  • 心音図(PCG)と単一誘導心電図(ECG)信号を利用して中等度以上の重症度のASを特定する深層学習ベースのモデル(eASモデル)の診断性能を評価。954人の患者のうち、7.3%が中等度以上のASを有していた。eASモデルはAUC 0.962(95%信頼区間:0.946~0.978)を達成。事前に指定された閾値では、感度は92.9%、特異度は87.7%であり、LR+は7.55、LR-は0.08であった。モデルから得られた確率は、心エコー図パラメータと強い相関あり。(投稿者追記:さすがに超聴診器開発元の解析👏)

演題CO1-10 次世代心不全スクリーニングツール:心音・心電図AIシステムとNT-proBNP診断能の比較検証(愛知県、あま市民病院)
  • 超聴診器AMI SSS1による検査を施行した連続347例のうち、NT-proBNP値が前後7日間以内に測定されていない、またはeGFR 30未満の症例を除外した225例が対象。心負荷判定とNT-proBNP値との関連を後方視的に解析。NT-proBNP各値(125/400/900)と心負荷判定を用いたROC曲線分析の結果、> 900 pg/mLと心負荷判定B以上(AUC=0.81)、またはA2以上(AUC=0.81)の相関が最も良好。超聴診器は心不全スクリーニングにおいてNT-proBNP値の代替ツールとして有用である可能性が示唆。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2026-04-23

論文 🏆 低灌流の身体所見パート1

  • 当院の臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kanehiro C, Honda S, Sakai C, Shindo A, Harimoto K, Kawasaki T. Physical Assessment of Congestion and Perfusion Status in Heart Failure. Cardiology 2025 May 5:1-11. Epub ahead of print.(PMID: 40324360
  • 現在の心不全ガイドラインでは,血行動態評価を4つの臨床プロファイル(すなわち dry-warm,wet-warm,dry-cold,wet-cold )に基づいて行うことが推奨されています.そこで活用されるのがノリアスティーブンソン分類ですが,必ずしも簡便とは言えません.
  • 本検討では心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無は共に,予後予測に有用であることを示しました.そして頚静脈所見と組み合わせた場合,Nohria-Stevenson分類と同程度の診断能を有していました.

- 心不全例の末梢所見と心血管事故 -

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2026-03-12

生成AI画像:頚静脈編

  • 最近,生成AIでお題を与えて一枚の画像を作ってもらうことを楽しんでします(文言編はコチラ
  • 今回は心不全の頚静脈評価で試してみましたが残念ながら従来の半座位・定量法が表示されました
  • 座位・定性法シンプル頚静脈)が表示される日まで,その普及活動を継続する決心がつきました


「心不全の頸静脈評価を説明する一枚の画像」に対するAIの回答(←解剖や漢字に誤りあり)

👉 AI(人工知能)に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄から選択可能)


松下記念病院 川崎達也)

2026-03-02

頚静脈:右 vs 左

動悸で来院時(前半)+息切れで来院時(後半)
同一症例で共に座位

😗 解説
  • 前半:右鎖骨上窩に速い拍動(矢印)
  • 静脈性拍動でフロッグサインと診断
  • 心電図は発作性上室頻拍(2:1伝導)
  • 後半:左側に遅い隆起性拍動(矢頭)
  • 用手圧迫が可能なので内頚静脈拍動
  • 心電図は洞徐脈で心不全発症と診断

💫 右 vs 左
  • 内頚静脈の拍動は,その解剖学的特性から,ほとんどの症例で右側優位に異常が出現します.稀に認める左側優位の内頚静脈拍動には,さまざまな原因(内臓逆位や頚部手術後,ペースメーカ留置後など)が考えられます(過去の投稿
  • 上記の動画は同一症例で,前半が6年前(ココ).頻脈時には右側の内頚静脈に異常が出現し,徐脈時には左側に異常が出現していることが面白いと思います(ちなみにTシャツも同じ?).両者の間に行ったアブレーションが何かしら影響?

松下記念病院 川崎達也)

2026-02-16

心尖拍動を診る

息切れで来院例の心尖拍動 (座位)

💁 解説
  • 座位で明瞭な心尖拍動を視認(動画の矢印)
  • 男性で拍動の最外側は乳輪の外側 ➜ 心拡大
  • 収縮期隆起は長い持続(抬起性) ➜ 心肥大
  • 心尖拍動は規則的でない ➜ 心房細動の疑い
  • 最終診断は肥大型心筋症+心房細動の心不全

😐 独り言
  • 肥大型心筋症で心室拡大をきたす例(拡張相あるいはend-stage)は稀で,通常は心尖拍動は乳輪内側に位置します.しかし病態が進行すると心房の拡大を呈するため,心室拡大がなくても心尖拍動は外側(下方)に偏位します.
  • 実際に左房容積が心尖拍動の左方偏位に最も関連する因子であることが報告されています(J Cardiol 2021;78:136-41).心拡大は心室 and/or 心房の拡大を意味すると思われるので,心拡大≠左室の内腔拡大でない点に要注意

松下記念病院 川崎達也)

2026-02-12

眼 👀 vs 心不全

息切れで来院(血液疾患で化学療法中)

😐 解説
  • 眼周囲の明瞭な浮腫(puffy eyes)
  • 浮腫は下眼瞼より上眼瞼で目立つ
  • 浮腫の部分は心持ち蒼白?(pale)
  • 座位で右側内頚静脈の拍動は陽性
  • 心音はギャロップ+全収縮期雑音
  • 最終診断は薬剤性心筋症(HFrEF)

👽 心不全 vs 眼
  • 眼瞼浮腫は必ずしも病的とは言えません(寝不足や号泣後).しかし本例のように上眼瞼が主体の浮腫なら心不全を想起させます(ただしエビデンスは見つからず)
  • 眼瞼浮腫で発赤がないことは炎症やアレルギーに伴う変化の除外に有用と思われます.(本例は血液疾患による貧血に加えて,心不全による血液の希釈も影響?)
  • 心不全の浮腫と言えば下腿浮腫ですが,眼瞼や陰嚢などにも出現することがあります.心不全での眼瞼浮腫の頻度を調べましたが見つけることができませんでした.
  • 心不全ガイドラインは「下腿(末梢あるいは四肢)の浮腫とそれ以外の浮腫」という分類がされています.「眼」という漢字は一つも記載されていませんでした.

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-19

ChatGPT(GPT-5.2)の返答

  • AIを仕事で利用する頻度がとても増えました.とんでもない嘘を自信満々で答えるときがあるため,返答を鵜吞みにすることはできません.しかし大いに参考になります(特に基本的な知識がある領域)
  • AIは進化がとても早い領域です.その変化を知るため現時点のレベルをまとめておきます.各設問に対するAIの答えをそのまま記載します.忘れなかったら😅1年後に同じことを最新AIに問うてみます

 
Q1 心尖拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心尖拍動は左心室収縮により生じる胸壁の拍動で、心機能評価に重要な身体所見である。正常では左第5肋間・鎖骨中線上に触知され、範囲は限局する。外側・下方への偏位は心拡大を示唆し、びまん性で強い拍動は左心室肥大や容量負荷を考える。触知困難な場合は肺気腫や肥満が原因となることがある。このように心尖拍動は心疾患の存在や重症度推定に有用である。

Q2 心音の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心音は心臓の弁運動や血流変化により生じ、心機能や弁膜症評価に重要な身体所見である。第Ⅰ音は房室弁閉鎖を反映し、増強は頻脈や僧帽弁狭窄、減弱は心筋障害を示唆する。第Ⅱ音は半月弁閉鎖音で、分裂の変化は肺高血圧や右脚ブロックなどの診断に有用である。第Ⅲ音は容量負荷や心不全、第Ⅳ音は心室拡張障害を示すことが多い。さらに心雑音の有無や性状から弁膜症や先天性心疾患の推定が可能であり、心音聴診は非侵襲的に循環器疾患を評価できる基本かつ重要な診察手技である。

Q3 頚静脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚静脈拍動は右心系の圧・容量状態を反映する重要な身体所見である。内頚静脈の拍動を観察することで中心静脈圧を推定でき、右心不全、容量負荷、脱水の評価に有用である。正常では半坐位で鎖骨上に軽度の拍動を認める程度であり、明らかな怒張は右心不全、三尖弁閉鎖不全、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などを示唆する。波形の観察も重要で、a波増高は右房圧上昇、v波増高は三尖弁閉鎖不全を考える。Kussmaul徴候(吸気時の頚静脈怒張増強)は収縮性心膜炎や右室梗塞に特徴的である。頚静脈拍動は非侵襲的かつ迅速に右心機能を評価でき、循環動態把握に欠かせない所見である。

Q4 頚動脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚動脈拍動は左心室からの駆出血流を直接反映する重要な身体所見であり、心拍出量や大動脈弁疾患の評価に有用である。正常では立ち上がりが速く、なだらかに下降する拍動を触知する。拍動の減弱や遅延(parvus et tardus)は大動脈弁狭窄を示唆し、逆に強く跳ねるような拍動(bounding pulse)は大動脈弁閉鎖不全や高拍出状態で認められる。二峰性拍動は肥大型心筋症を、拍動の左右差は頚動脈狭窄や大動脈解離を疑う所見となる。また、頚動脈雑音の聴取は動脈硬化性病変のスクリーニングとして重要である。頚動脈拍動の触診・聴診は簡便かつ非侵襲的に全身循環や弁膜症の手がかりを得られるため、循環器診察における基本かつ不可欠な所見である。

Q5 傍胸骨拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 傍胸骨拍動は胸骨左縁で触知される心拍動で、主に右心系や心室負荷の状態を反映する重要な身体所見である。正常では明瞭に触知されないが、持続的で強い傍胸骨拍動は右心室肥大や右心系圧負荷を示唆する。肺高血圧、肺動脈弁狭窄、慢性肺疾患に伴う肺性心などで認められることが多い。また、胸骨左縁下部での拡張期に強い拍動は右心室容量負荷や三尖弁閉鎖不全を考える手がかりとなる。心室中隔欠損などでは拍動が増強する場合もある。傍胸骨拍動は視診・触診のみで評価可能であり、右心機能や肺循環異常を推定するうえで有用な、基本的かつ重要な循環器身体所見である。


松下記念病院 川崎達也)

2026-01-05

肝頚静脈逆流 Hepatojugular reflux: HJR (or Abdominojugular test)

  • 肝頚静脈逆流のメタアナリシス(J Gen Fam Med 2022;23:393-400)を眼にしたのでPICO(ピコ)形式で共有します

    1. P – 7件の研究とその5195人
    2. I – 二変量ランダム効果解析
    3. C – 心不全に対する診断能
    4. O – 感度0.12,特異度0.96

😑 「う~
  • 先日,卒後15年目くらいの臨床バリバリ循環器専門医から「hepatojugular refluxって何ですか?」と聞かれました.個人的にも実臨床で行うことはまずありません.心不全の感度12%では致し方ないでしょうか...
  • ただし2025年改訂版 心不全診療ガイドラインには(まだ)記載されています「この(←頚静脈のこと)拍動が吸気や腹部圧迫によって明瞭化する所見(Kussmaul徴候,肝頸静脈逆流)も 体うっ血を示唆する」(P32)
  • 肝頚静脈逆流(HJR)の陽性基準は,自発呼吸下で右上腹部を10秒以上圧迫したとき頚静脈圧3cm以上かつ15秒以上続く場合が多いと思います(過去の投稿)…いやはやシンプル頚静脈の方がはるかに簡単で感度も高そう

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-01

三徴候の共存 🎍 元旦

労作時の息切れで来院例(座位)

😐 解説
  • 頚部の上1/3(顎下)に陥凹(右向き矢印)
  • 吸気負荷で別の部位に隆起(左向き矢印)
  • 拍動はいずれも不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外頚静脈の怒張 ➜ クスマウル徴候(矢頭)
  • 内頚静脈の陥凹+外頚静脈怒張 ➜ 心不全
  • 頚動脈隆起(コリガン脈)➜ 大動脈弁逆流
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁逆流あり
  • 最終的にARとAFを伴った心不全と診断した

💟 現場実況
  • 本例で初診時に身体所見を確認したときには,安静時の内頚静脈の陥凹が吸気後には隆起(ランチシ徴候)へ変化しました.もちろんこれで,中心静脈圧が高度に上昇した非代償性心不全と診断できました.
  • その後,看護師さんと車いすで検査に回ってもらいました(心電図や胸部X線,採血).その後の結果説明時(←この時に上記動画を記録)には,ランチシ徴候はなく代わりにクスマウル徴候を認めました.
  • 本例は吸気後に頚動脈拍動(コリガン脈)を認めます.よく見ると安静時にもすでにありそうです.通常,吸気で頚動脈所見は変化しません.本例は筋緊張などが加わり拍動が顕性化したと考えられました.

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-29

今週の一枚 🎯

  • 松下ERランチ・カンファレンス」の名物に「今週の一枚」があります.実際に当院で経験したその週で最も印象的な症例の画像コーナーです.
  • 今回は身体所見(+ベットサイド心エコー)で診断しても治療に悩む(悩んだ)例です.本ページとも関連すると思われるので共有しておきます.

呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)



松下記念病院 川崎)