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2025-04-24

二重罠

息切れでERに搬入された男性(座位)

😐 解説
  • 頚部に周期的に陥凹あり(矢印)
  • 呼吸と同調しているため陥没呼吸
  • 頚静脈の明らかな拍動は視認せず
  • 最終診断は初発心不全(PEF, CS1)
👺 つぶやき
  • 本例の肥満の程度は軽度ですが,顎下や顎のラインが不明瞭なことに要注意.このような症例では,内頚静脈の拍動が観察困難なことが少なくありません(同様の自験例).これは内頚静脈が深部静脈であり,胸鎖乳突筋を介した皮膚面の拍動として描出される以上,不可避です.
  • 陥没呼吸は努力呼吸時に出現する身体所見の一つで,喘息発作時(自験例)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例(自験例)などの呼吸器疾患で出てくることが多いと思います.本例ではしっかり見ないと「頚部の陥凹で心不全」となり結果は正解ですが...(プロセスは🙅)


松下記念病院 川崎達也)

2025-04-21

感染性心内膜炎:末梢サインの頻度

  • 感染性心内膜炎の身体所見では心雑音と末梢サインに注目します.心雑音や音質変化は感染性心内膜炎を示唆しますが,初診の症例でその判定は困難です.心雑音を認めない症例も3~4割あります(Eur Heart J 2023;44:3948-4042).
  • 一方,末梢サインの感度は低めですが,とても高い特異度を有しています.月間心エコーで原稿依頼を受けたときに,その出現頻度を調べたのでここに記載しておきます(調査した論文は心エコー 2025;26:22-6を参照してください).

末梢サイン 出現頻度
点状出血 0.6~30%
オスラー結節 1.9~10%
ジェインウェイ病変 1.6~10%
スプリンター出血 10~26%

😊 おまけ
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に更新(Duke ISCVID基準:Clin Infect Dis 2023;77:518-26)され,末梢サインは臨床診断の小基準として今回も明記されています.心雑音に関しては新規の逆流性雑音に限ると記載
  • 末梢サインは,出現や消退が病期や病勢に影響され,塞栓に由来する所見は左心系の病態に限られますが,高い特異性を有しています.鑑別診断に感染性心内膜炎が含まれる病態ではエコー前に是非,確認したい所見です


松下記念病院 川崎達也)

2025-04-17

今週の一枚 🎯

大動脈瘤を指摘された男性



松下記念病院 川崎)

2025-04-14

フィジカル検定

  • 第22回循環器Physical Examination講習会(2025.3.22-23)で実施した特別企画『フィジカル検定』の解答ホームをリンクします(主催者の許諾を取得済).
  • 実際の問題(身体所見)は供覧できませんが,解答フォームだけでも役立つかと思います(正答と簡単なフィードバックあり).よろしければご覧ください.



松下記念病院 川崎達也)

2025-04-10

夢叶う Dreams come true

  • 2025年3月28日に新しい心不全ガイドラインが公開されました.そして遂に頚静脈の座位定性法が記載されました(下の上図).おまけに吸気負荷の有用性も併記されています.その部位で引用されているのが2論文です(下の下図).
  • 最初の論文は頚静脈の座位定性法を(初めて?)報告したフィンランドのSinisaloらの報告です(Am J Cardiol 2007;100:1779-81).もう一つはなんと座位定性法に吸気負荷を加えた当院の報告です(Am J Cardiol 2022:170:71-5).


🕔 特別な朝
  • この日は(いつも通り)5時前に起きて,真っ先に日循ホームページを覗いてみました.そして更新された心不全ガイドラインの図と文言を見てとても驚きました.予想を大幅に上回る改定で,おまけに引用論文も最高です.この変更は前もって何も知らされていませんでした(僕レベルでは当然😅)
  • 早速(おそらく今回の改定に尽力していただいた)先生にお礼のメールをしました.すると5分後に「いままで使われていなかったことが問題...これから広めていきましょう」とお返事をいただきました.時計はまだ6時にはなっていません.とても素晴らしい朝になりました.本当に夢が叶いました.


松下記念病院 川崎達也)

2025-04-07

2024年度SNS解析:循環器Physical Examination講習会

  • 2024年3月に開催された循環器Physical Examination講習会の動画切り抜きを毎週リリースしてきました.その一年間のデータを解析しました.
  • SNSの4大プラットフォームで,計139,786再生されていました.1動画あたりでは平均2,589再生(最小1,125~最大11,877)でした.
  • ニッチな領域であるためSNSアルゴリズムにハマってバズることはないと思われますが,多くの方にご覧いただけたことに感謝いたします. 

😀 SNSごとの解析
  • X (Twitter)➜ 計93,664再生 平均1,735(523~11,000)
  • Instagram ➜ 計6,763再生 平均125(22~808)
  • TikTok ➜ 計27,051再生 平均501(37~1,211)
  • YouTube ➜ 計12,308再生 平均228(22~618)

- 2024年度の最多再生数動画:計11,877再生 -

松下記念病院 川崎達也)

2025-04-03

\負荷頚静脈法:新たな心不全評価/

  • 日本医事新報に総説を執筆させていただく機会を得ました(感謝)。頚静脈を用いた心不全診療で、私の知識と経験のすべてを盛り込みました。
  • 選び抜いた動画19点と図15点(自作)を含む全24ページの温故知新です。同時に電子書籍としても発行されました。よろしければぜひご覧ください。


(電子書籍⭐️コチラ) 

😊 追記 
  • 日本医事新報は1921年(大正10年)創刊で、毎週土曜日に発行されています(定価1,100円)。現在する商業医学誌では最古の一つで、発行部数はなんと39,500部(週刊)
  • ちなみに日本内科学会雑誌の第1巻は1913年発行で、毎月10日に刊行(臨時増刊号を含め年間13回の刊行)。発行部数は2022年2月10日時点で10万9,300部だそうです。

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-31

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-27

負荷の組み合わせ

心筋梗塞後の症例(座位)

🐔 解説
  • 安静では頚部に明らかな拍動なし
  • 吸気保持で拍動が出現?(矢印)
  • 吸気を保持したまま座位➜立位へ
  • 微妙な頚部の拍動は完全に消失!

    🐙 コメント
  • 本例は治療によってHFrEFからHFpEFに改善したHFrecEF症例です.深吸気保持(前負荷増加)で拍動が出現しているなら,中心静脈圧(≒右房圧)は軽度~中等度に上昇していると考えられます.しかし座位から立位への体位変換(前負荷減少)では中心静脈圧は低下しています. 実際に本例はテニスを楽しんでいます.
  • 吸気負荷などで頚静脈拍動が出現しても,立位で消失する症例は日常生活に支障が少ないと思います(自験例).逆に立位になっても拍動が持続する症例は,労作時の息切れが問題になることが多いようです(自験例).さまざまな負荷が可能なシンプル頚静脈©は,心不全管理管理で無限の可能性を秘めているかも...😁

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-24

CareNet 「今日の所見」

株式会社ケアネット(CareNet, Inc.)
  • 1996年創業の医療関係者向けのサービス提供などを行う日本の情報サービス会社
  • 2000年開設のCareNet.comは医師22万人を含む会員数44万人以上(2023年10月)
  • 今日の所見」はケアネットで平日(月~金)に一問ずつ提示される画像クイズ
  • この3月から毎週水曜日を担当することになりました(循環器の身体所見に特化)
  • 無料で過去1週間のクイズがご覧いただけます(初回のみ簡単な登録が必要です)


👶 独り言
  • 当院の循環器内科や初期研修医に伝えたら多くが既に利用していました.
  • 本気でポイントを貯めている(ポイ活)メンバーもいてびっくりでした.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-20

医療は人文学

陳旧性心筋梗塞の既往がある症例(座位)

💦 現場実況
  • 患者さんは特に体調変化はないと言う
  • 今日は頚を確認しにくい服を着ている
  • 安静座位で明らかな頚部の拍動はない
  • しかし深吸気の保持で拍動出現(矢印)
  • BNPは200台から400台に増加していた

😐 独り言
  • 患者さんの主治医に対する心理には二通りある(と思う).一つは過剰に心配して体調の変化を伝えようとする姿勢.もう一つは逆に症状の悪化時にはなるだけ隠そうとする姿勢.
  • 本例は駆出率が低下したHFrEFであったが,心不全入院はなく,状態は長年安定した.しかし今日に限って頚部を確認しにくい(首元が締まった)シャツを着ている(と感じた).
  • 毎回,頚部を確認しその意義をご本人にも伝えていたことを考慮すると,なんとなく患者さんの心理が伝わってきた.心不全の悪化を主治医に悟られたくなかったのだろう
  • あえてシャツのボタンをはずしてもらうことはしなかった.症状に変わりはないと主張するが,心不全が悪化している可能性をそっと伝えた.減塩指導と早めの再診を指示した.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-17

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2025-03-14

🏆 論文

  • 循環器内科の本田先生が執筆されたケースレポートが出版されました
  • 収縮期雑音を呈した動脈管開存(PDA)の一例です(連続雑音なし)
  • 軽度肺高血圧のみでEisenmenger(アイゼンメンジャー)症候群なし
  • 心エコー図では拡張期にも短絡シグナルが描出されますが雑音なし

🎉 PDA雑音
  • PDA患者の典型的な雑音といえばもちろん(第2音で途切れることなく持続する)連続性雑音です。本例のような大動脈-肺動脈シャントに加えて、動静脈シャント(冠動脈動静脈瘻、右心室へのバルサルバ洞動脈瘤破裂など)や動脈および静脈の流れの変化(静脈雑音乳腺雑音甲状腺雑音など)があります。
  • 肺高血圧を伴うと拡張期雑音が消失することは理にかなっています。ただし本例の肺高血圧は軽度でした(平均圧28 mmHg、1.4~2.1 WU)。本例では収縮期雑音のみを聴取かつ記録した正確な原因は不明ですが、貧血や肝硬変などの併存疾患が非典型的なPDA雑音に変化させたと考えるのが妥当でしょうか?
  • Eisenmenger患者にみられるように、大動脈圧と肺動脈圧の平衡例では、雑音が完全に消失し無音性PDAになります(一部の症例では拡張期雑音のみ)。PDA雑音の性状は、肺動脈内のジェットの方向によっても変化するようです。本論文の考察ではこの辺りを(少し)深堀したので興味がある方はご覧ください。


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-13

立位負荷と日常生活

慢性心不全例(HFpEFでEF=60%)

💁 解説
  • 頚部に血管の隆起あり(外頚静脈)
  • 吸気時虚脱(クスマウル徴候陰性)
  • 鎖骨上窩の周期的陥凹は呼吸性変動
  • 吸気負荷で頚部に拍動出現(矢印)
  • 内頚静脈の拍動であり心不全の状態
  • 座位から立位の体位変換で拍動消失

👻 補足
  • 本例は様々は治療を行っても内頚静脈の座位所見が陰転化しない慢性心不全例です.ただし日常生活には支障はなく,長年安定しています.
  • 座位から立位という体位変換はもちろん心臓にとっての大きな仕事です.しかし立位による前負荷(静脈還流)の低下は心負担を減らします.
  • 本例のように立位で内頚静脈所見が悪化しないあるいは陰性である症例は自覚症状に乏しいことが多いと思います(立位でも陽性の自験例

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-10

心不全と長母音(声)

  • 急性の非代償性心不全では発声も注目すべき身体所見の一つになるようです.肺うっ血などによる息切れに加えて,声帯浮腫などの影響があるようです.心不全症例に「あ~」と言ってみてくださいという日が来るのかもしれません(すでに実施されている施設が少なくなかったりして…😅)

🚨 臨床研究Appl Sci (Basel) 2023;13:1827
  • 急性心不全で入院した患者52人の会話を毎日記録
  • 音声と会話の特徴を同定し治療中との関連を調査
  • 治療後は治療前より安定(明瞭で速くて長い発声)


😀 独り言
  • 息切れの判定方法としてはリハビリ中のトークテスト(Talk test)が有名です.運動強度を推定する簡便な方法の一つで,快適に会話しながら行える運動強度はおおむね安全に実施できることがガイドラインにも記載されています. 
  • 昨年の心不全学会での講演で,「長母音を18秒出せれば5メッツ以上の運動耐容能」ということを耳にしました(論文を探し出せず).循環器診療では身体所見が大切ですが,音声に関してはまだこれからの領域かもしれません.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-06

診る練習ビデオ

心雑音で来院した症例

👀 解説
  • 安静では指先に特記すべき所見なし
  • 圧迫時の爪床の中部~遠位部に注目
  • 白色とピンク色の色調変化に気づく
  • 最終診断は二尖弁の大動脈弁逆流症

👂 独り言
  • 心音(特にⅢ音やⅣ音などの低調音)は,何度も聴いて耳に覚え込まします.視覚も同じです.何度も見ていると僅かな変化にも気が付きます.
  • この動画はそういった眼の練習に最適と思われます.本例は中等度の大動脈弁逆流ですが,中等度以上なら,ほぼクインケ徴候は観察できます.
  • 本コンテンツには大動脈弁逆流例の爪床変化が多くアップされています(コチラから).爪圧迫以外の描出ワザも是非,マスターしてください.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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2025-02-27

🏆 論文

  • 初期研修医の西機先生が循環器内科で経験した症例がPubMedに収載
  • 左室中部閉塞の形態を呈したATTR心臓アミロイドーシスの一例です
  • 洞調律なのにⅣ音を欠き,OKサイン(Perfect O sign)も不可でした
  • 心アミでParadoxic Jet Flow(奇異性血流)を描出した世界初の報告

🎉 Paradoxic Jet Flow: PJF(奇異性血流)
  • 拡張早期に心尖部から心基部に向かう血流シグナルで,心尖部ポーチの存在の間接的な証拠です.当科は本所見にとても興味を持つ医師が複数名在籍して,今までにPJFに関連する世界初と思われる症例を報告してきました.
  • 例えばPJF雑音(Tex Heart Inst J 2018;45:102-5),運動誘発PJF(J Cardiol Cases 2021;23:170-2),右心系PJF(J Med Cases 2020;11:57-60)などです.とてもニッチな所見ですが,これからもこだわっていこうと思います.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-24

脱水とうっ血

大動脈弁位人工弁症例の息切れ(座位)

💦 解説
  • 頚部の皮膚は乾燥して張りがない
  • 安静時に頚部に拍動もある(矢印)
  • 吸気で拍動の明瞭化 ➜ 内頚静脈
  • 皮膚をつまむ ➜ ツルゴール低下

😐 追加コメント
  • 本例は視診で中心静脈圧上昇(心不全)と血管内脱水と診断できそう
  • BNP値は300台であったがご本人の息切れや倦怠感の訴えは強かった
  • もちろんこのような症例には安易な利尿薬追加や減塩指導は避けたい
  • 血圧が正常高値であったため降圧薬の強化と心臓リハビリを追加した

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-20

😊 素敵な紹介 パート2

なんとなく元気がない慢性心不全例(座位)

💁 ランチシ徴候(三尖弁逆流)
  • 頚部の中央に明瞭な拍動(隆起)あり
  • 容易に圧迫されるため動脈でなく静脈
  • 心エコー図で高度の三尖弁逆流を確認
  • 推定される肺動脈収縮期圧は50 mmHg
  • 整脈かと思ったが心電図では心房細動
  • 最終的に心不全(PEF)の増悪と診断

 📧 共通言語「座位で頚静脈が見える」
  • 本例もかかりつけ医からの紹介がとても素敵であった(前回の素敵な紹介).「足に浮腫はないけど,首がピコピコしています」と...👍
  • 頚静脈の座位定性法が広がると,心不全の診断をより迅速に行うことができます.無料アプリ「シンプル頚静脈©」を是非ご活用ください
  • 病院やクリニック,救急隊,施設職員だけでなく,心不全患者さんやその家族にもこの表現が共通言語として広がることを願っています.

(無料画像から作成)

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-17

第21回 循環器Physical Examination講習会より


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2025-02-13

健常者の心機図

フリーの画像がなくて苦労されているとお聞きしたのでPPTで作成してみました(版権放棄😙ご自由にお使いください) 
  • 心電図
  • 心音図
  • 頚動脈波曲線
  • 頚静脈波曲線
  • 心尖拍動図


松下記念病院 川崎達也)

2025-02-10

心音クイズ(Q7・Q8)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズの第四弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回はⅡ音肺動脈成分の亢進とⅢ音が共存した症例および重合奔馬調律から四部調律に変化した症例を取り上げました.5領域(2R, 2L, 3L, 4L, 心尖部)の心音と複数の心音図を提示しています.是非,心音の違い(変化)を聴き比べてみてください.
  • 今回でシーズン1(3ヵ月毎2症例計8例)が終了しました.そしてシーズン2も始まることが決定しました 😁 無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです .


松下記念病院 川崎達也)

2025-02-06

頚静脈の座位定性法も無敵ではありません

鼠経ヘルニア術前に心電図異常を指摘された症例(座位)


  • 息切れなど心不全を示唆する症状はないが,BNP値は150 pg/ml程度に上昇していた.心エコー図には特記すべき異常所見はなし.
  • 心不全の有無を判定するため頚部を観察したが,大きな腫瘍に占拠されていた.橋本病による長い治療歴あり(現在はeuthyroid)
  • 心音でも心不全を示唆する所見(Ⅲ音やⅡ音肺動脈成分の亢進など)はなし.日常生活から判定した運動耐容能も保たれていた.
  • 胸部圧迫感の自覚はなく,冠危険因子も高血圧のみ.最終的に手術に支障はないと判断して,紹介元の外科医に返書を作成した.
  • 稀ながら頚静脈の座位定性法が困難が状況がある.甲状腺疾患による甲状腺腫肥満猪首,座位姿勢の困難例などが相当する.

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


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松下記念病院 川崎達也)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性



松下記念病院 川崎)

2025-01-27

仕事外で訪れた老人ホームで...

下腿浮腫があるとスタッフから聞きました(座位)

👵 解説
  • 両側の下腿浮腫(圧痕性)
  • 頚部に眼をやると拍動あり
  • 拍動は陥凹なので頚静脈!
  • 非代償性心不全と診断した

 👴 現場実況
  • 本例のバイタルサインは安定し,息切れなど心不全を示唆する症状は全くありませんでした.ほとんどの時間をベットに腰かけて過ごしているため,施設のスタッフは重力による水分貯留と判断していたようです.
  • 内頚静脈の判定方法(シンプル頚静脈©)を施設スタッフにお伝えました.幸い翌々日が施設担当医の診察日で,そこで利尿薬が処方され改善 😀 原因はお菓子の大量消費による塩分過多と思われました 😮

松下記念病院 川崎達也)

2025-01-23

顎下と顎のラインにも注目

息切れが再発した拡張型心筋症例(座位)

😐 解説
  • 安静座位で頚部に拍動は視認しない
  • 深吸気(保持)でも拍動は出現せず
  • BNP値は157 → 1,400 pg/mLに著増
  • 最終的に心不全増悪と診断して入院
💁 追加コメント
  • 内頚静脈は深部静脈であるため胸鎖乳突筋を介する皮膚面の拍動として認識されます.よって本例のように評価が難しい場合があります.一方,外頚静脈は表在静脈であるため視認は容易ですが,中心静脈圧の推定には不向きです(その理由).
  • 高度の肥満では内頚静脈の観察は困難になります(本例のBMIは約35 kg/m2).BMIがあまり大きくなくても首が太くて短い場合(いわゆる猪首)では同様に観察が困難です.一つの目安は顎下や顎のラインが不明瞭なことでしょうか(下図)


松下記念病院 川崎達也)

2025-01-20

第21回 循環器Physical Examination講習会より


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松下記念病院 川崎達也)

2025-01-16

今週の一枚 🎯

発熱が続く症例の眼瞼結膜

👀 点状出血(Petechiae)
  • 右の眼瞼結膜に複数の点状出血を認める
  • 収縮期雑音はあるが大動脈弁位は人工弁
  • 他の末梢サイン(オスラー結節など)無
  • 経胸壁心エコーで大動脈弁周囲は不鮮明
  • 経食道心エコーで大動脈弁の疣腫を確認
  • 血液培養4ボトルから全てE. faecalis検出
  • 最終診断はもちろん感染性心内膜炎(IE)

😐 IEあれこれ
  • 感染性心内膜炎で血管塞栓に関連した無痛性の点状出血が生じることは,カナダ生まれの内科医であるSir William Osler(1849–1919)が19世紀に既に記載している(Br Med J 1885;1:522-26).
  • その出現頻度は罹患部位や病期によって異なると思われるが,0.6~30%と報告されている(月間心エコー 2025年1月号).体のあらゆる部分に出現するが,眼瞼結膜や口腔粘膜が検出しやすい.
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に改定された(Clin Infect Dis 2023;77:518-26).このDuke-ISCVIDクライテリアでも末梢サインは臨床診断の小基準として明記されている.
  • ちなみに欧州で行われた感染性心内膜炎3011例の前向きコホート研究(Eur Heart J 2019;40:3222-32)では,22.3%に発熱がなく,34.9%では心雑音を欠いていたことにも注目しておきたい.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎)

2025-01-13

😊 素敵な紹介状

息切れが増悪した慢性心不全例(座位)

💗 慢性心不全の増悪
  • 座位で通常呼吸時には頚部に拍動なし
  • よく見ると吸気時に鎖骨上窩に拍動?
  • 深吸気で拍動が安定して出現(矢印)
  • 拍動は陥凹 → 静脈性 → CVPは上昇 

 💓 臨床現場
  • 本例はかかりつけ医からの紹介状がとても素敵であった.「頚静脈の拍動が見えるのでSGLT2阻害薬を追加しました」と記載してあった.
  • 当院受診は薬剤追加の1週間後で,その間に患者さんも自覚症状がずいぶん楽になった様子.当時は通常呼吸時に拍動が明瞭だったと予想.
  • もっとも吸気負荷後にまだ拍動が観察できるので追加加療は必要.自験データでは安静時陽性と吸気後陽性の1年後事故率は同程度(論文

松下記念病院 川崎達也)

2025-01-09

今週の一枚 🎯

腎機能が悪化した症例(Cr 1.4 → 4.5 mg/dl)



松下記念病院 川崎)

2025-01-06

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

松下記念病院 川崎達也)