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2021-04-22

古典的クスマウル徴候

慢性左心不全の1例に座位で深呼吸負荷


松下記念病院 川崎達也)

2022-06-13

吸気ならぬ呼気負荷

労作時の息切れで来院した症例

🍘 解説
  • 深吸気の保持で右鎖骨上窩に陥凹(矢印)あり(クスマウル徴候陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈の陥凹はx谷とy谷が同じ深さで優位性なし(y谷優位の症例
  • 興味深いのは深呼気保持では内頸静脈拍動は不明瞭(表在静脈は隆起)

🍙 独り言
  • 個人的には内頸静脈の簡易定性法(座位で鎖骨上に拍動の有無を視覚的に判定)では吸気負荷を追加するようにしています(クスマウル徴候の確認).簡易定性法では軽度(〜中等度)の中心静脈圧上昇を見逃すことがあるためです.
  • このクスマウル徴候ですが,逆に吸気時に頸静脈拍動が消失する症例は経験したことがありません.逆クスマウル徴候(paradoxical or reversal Kussmaul's sign)という用語もヒットしません.報告したら世界初になるかも...
  • 同様に内頸静脈の呼気負荷(jugular venous response to expiration)に関する報告もほとんどないようです.あまり役立つとは思えませんが,特定の疾患に対する有用性は否定しません.発見したら歴史に名を残せるかも...😳

松下記念病院 川崎達也)

2022-04-14

クスマウル徴候:陰性? 陽性?

慢性心不全の増悪で来院した症例

🐤 解説
  • 座位で外頸静脈を明瞭に視認できる.呼吸性変動(吸気時に虚脱)があるため中心静脈圧の判定に利用可能(外頸静脈は内頸静脈と異なり逆流防止弁の効果が強いため,呼吸性変動がない場合はあまり信用できない).
  • 外頸静脈は呼気時には怒張しているが,吸気時には虚脱するためクスマウル徴候(Kussmaul's sign)は陰性と判断.しかし深吸気保持(ビデオ後半)では外頸静脈の怒張が出現しているためクスマウル徴候は陽性?
  • 内頸静脈の拍動も鎖骨上窩(矢頭)で観察できるため,中心静脈圧は確実に上昇している.忘れがちな 前頸静脈(Anterior jugular vein:矢印)は吸気時に拍動が明瞭で,広義のクスマウル徴候陽性と考えられる.

🐥 独り言
  • ドイツの医師 アドルフ・クスマウル が発見したこの負荷法は,非常に奥が深いと思います.臨床現場では本例のように複雑な反応を示す例が散見されます.その詳細な原因は不明ですが,吸気時の胸腔内圧低下と静脈還流の増加にタイムラグがあるためかもしれません.肺の状態(例:肺葉切除後)などの影響を受けることもあるようです(自験例).個人的にはとても気に入っている負荷なので,あまり深く考えずにほぼ全例に行なっています 😊

松下記念病院 川崎達也)

2022-07-14

この組み合わせを見たら…

非心臓手術の術前評価で循環器内科を受診した症例

🐔 解説
  • 座位で内頸静脈と(僅かに)外頸静脈の拍動を視認 ➜ 中心静脈圧の上昇
  • 吸気で外頸静脈が怒張している(動画中の矢印)➜ クスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈は吸気で拍動が明瞭化(動画の✳︎) ➜ (広義のクスマウル徴候)
  • 拍動は二峰性陥凹でx下行よりy下行が大かつ急峻(フリードライヒ徴候)
  • 本例は他院で収縮性心膜炎と診断され経過観察されている症例であった
  • 心不全は概ね代償されているため当院で予定の非心臓手術は可能と判断

🐓 独り言
  • 急峻y下行(フリードライヒ徴候)と深吸気時怒張(クスマウル徴候)の組み合わせは収縮性心膜炎を疑うきっかけになります(典型例).本例では通常呼吸時の外頸静脈で(よくみると)y谷が急峻であることから”ピン”ときました.
  • 心エコー図で収縮性心膜炎に関する所見をルーチンに評価することはないと思います.よって身体所見で収縮性心膜炎を疑い,そのことをエコー検者に伝えることが重要です(フィジカルと心エコー図が手を組めば鬼に金棒以前の投稿

松下記念病院 川崎達也)

2024-09-05

動脈と静脈の共演

息切れで来院した症例(端座位)

🐤 解説
  • 座位で周期的隆起あり(矢頭)➜ 動脈性?
  • 外頚静脈は視認できるが拍動なく評価保留
  • その内側はピクピクと僅かに陥凹 ➜ 静脈?
  • 吸気で隆起性拍動に変化なし ➜ 動脈確定
  • 外頚静脈の虚脱なし ➜ 広義クスマウル陽性
  • 陥凹は深吸気でより明瞭+上縁上昇(矢印)
  • 最終診断は弁膜症を伴った高拍出性心不全
🐥 現場実況
  • 自己紹介を済ませて病歴聴取をしていると,やたらと忙しい頚部に眼がクギ付けになりました.しかし動静脈鑑別のための触診は今しばらくグッと我慢.身体所見の確認中に待ちかねたように呼吸負荷を行なった次第です.
  • 頚動脈と頚静脈の鑑別には,①触診による拍動の強さ,②呼吸性変動の有無,③脈触知を併用した時相判定,④圧迫による消失の有無などがあります(過去の投稿).しかし触れずに診断がフィジカルの高みでしょうか?

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-19

呼吸反応+拍動パターン:判定量的評価

慢性左心不全で加療中の症例が息切れの悪化を訴えた

🐦 解説
  • 深吸気保持で鎖骨上窩に陥凹(矢印)が出現(クスマウル徴候が陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • さらによく見ると,内頸静脈の陥凹はy谷が優位(通常ではx谷が優位)
  • 慢性左心不全の増悪と診断して内服薬の調整を行なった(利尿薬追加)

🐤 追加コメント
  • 内頸静脈拍動は二峰性の陥凹が基本です(復習).通常はx谷>y谷で,中心静脈圧の上昇に伴いx谷<y谷収縮期陽性波と変化することが多いと思います.
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈拍動の有無を視覚的に判定する簡易定性法はあくまでも定性法ですが,上記の拍動様式を評価すれば半定量的な評価もできます.
  • さらに呼吸に対する反応も追加可能(例:通常呼吸の吸気時に認めれば,通常のクスマウル負荷陽性よりも重症で,拍動パターンがx谷の閉塞ならより重症)

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-14

上肢挙上負荷は慎重に

慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

👿 解説
  • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
  • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
  • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
  • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
  • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

💀 独り言
  • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
  • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
  • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-04

首の回しすぎに要注意

息切れを訴える症例(端座位)

🐦 解説
  • 顔がほぼ90度左側を向いている ➜ 各種頸静脈にも影響あり
  • 内頸静脈 ➜ 拍動を視認し吸気後は上縁上昇(頸部の上1/3)
  • 外頸静脈 ➜ 胸鎖乳突筋までは怒張(吸気負荷への反応なし)
  • 前頸静脈 ➜ 安静時に周期的拍動が明瞭(上縁は内頸と同じ)
  • ただ吸気では前頸静脈上縁はあまり変わらない(内頸と乖離)

😀 ショート動画は多くを語る
  1. 安静時の前頸静脈の心周期に伴う明瞭な拍動(上縁の上下運動)を考えると,外頸静脈にも同様の拍動が観察されてしかりです.よって本例は顔を左方に強く向けたことで外頸静脈が胸鎖乳突筋に圧排されていると考えられます.つまり「頸静脈拍動の評価時には首の回転はほどほどに」
  2. 内頸静脈の拍動上縁は吸気負荷後にかなり上昇しています(広義のクスマウル徴候が陽性).一方,明瞭な拍動を認めた前頸静脈の上縁は,吸気負荷でもさほど上昇していません.つまり「中心静脈圧の推定に,内頸静脈以外はあまり頼ってはいけない(特に周期的拍動を欠く時)」
  3. 「内頸静脈が座位で視認できる時に,吸気負荷で拍動が消失する症例があるのでは...」という意見があるようです.一見もっともらしく聞こえますが,個人的にはあまり経験したことがありません.つまり「座位で陽性ならクスマウルで悪化(吸気陽性)」😑 これは現在,調査中です

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-09

油断禁物:否定の証明は常に困難

🕗 朝の病棟詰所で...
  • 指導医「胸部X線は立派な心不全だよ」
  • 専攻医「確かにBNPも上昇しているし...」
  • 指導医「頸静脈はどうなの?」
  • 専攻医「頸静脈は見えないんです」
  • 指導医「マジ? ちょっくら見てくるわ」

👥 現場実況
  • 臥床(枕なし)では頸静脈拍動は視認せず(動画前半)
  • 臥床のまま深吸気負荷を追加しても拍動なし ➜ 脱水?
  • しかし座位で明瞭な内頸静脈の拍動が出現(動画後半)
  • 深吸気負荷で拍動は消失せず(広義のクスマウル徴候
  • 患者さんが協力的であったため病棟の皆で所見を共有

 👤 追加コメント
  • 臥床(枕あり)では正常の中心静脈圧でも頸静脈の拍動(少なくともx谷)を観察できます(自験例).枕なしではなにも見えないこともありますが,吸気負荷を追加すればなんからかの変化が出現すると思います.
  • 一方,本例のように中心静脈圧が極端に上昇した症例では,臥床では内頸静脈の拍動が観察できないことがあります(つまり判定上限を超過).このような場合では半座位や座位にする必要があります(判定上限の引き上げ).
  • もっとも臥床で内頸静脈が視認できなくても,外頸静脈が怒張していることから中心静脈圧の著増を推定することができる場合もあります(自験例).しかしやはり外頸静脈は信頼性が高くないため過信は禁物です(理由).

松下記念病院 川崎達也)

2021-09-27

頸静脈クイズ

便秘と急激な体重増加で消化器内科を受診した症例(座位で記録)



松下記念病院 川崎達也)

2022-12-01

これなら安心

拡張型心筋症+アブレーション後の症例
診察前の心電図検査で心房細動が再発していることが判明した

🐦 解説
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度〜高度上昇なし
  • 左上肢の挙上でも拍動は視認せず ➜ 中心静脈圧の中等度の上昇なし
  • 息切れなどの心不全症状なく聴診でもⅢ音を聴取せず ➜ 1月後再診

🐳 独り言
  • 以前は吸気負荷で内頸静脈の拍動が出現しなかったら(広義のクスマウル徴候陰性),「これなら一安心」と判断していました.しかし最近では心不全(新規または再発・増悪)が疑われる症例では,吸気負荷が陰性の場合に吸気と左上肢挙上の同時負荷を行うようにしています.
  • 実は本症例は診察室に入ってきて椅子に腰掛けた直後の検査で,左上肢挙上負荷は陽性でした.しかしスマホを取り出して撮影許可を得た後の上記記録では陰転化していました.1〜2分の座位で視認できなくなる静脈圧の上昇なら,急いで介入しなくても大丈夫だろうと判断しました.

松下記念病院 川崎達也)

2021-07-05

”最強”負荷法

息切れで来院した症例

👻 解説
  • 立位では頸静脈の拍動は目立たないが,しゃがみこみ(蹲踞姿勢)で内頸静脈の陽性拍動が出現(矢頭)
  • その後に追加した深吸気で,内頸静脈の陽性拍動は顎下まで上昇した(矢印)➜ 広義のクスマウル徴候陽性
  • 耳垂にある45度の皺にも注目 ➜ フランク徴候またはearlobe creaseと呼ばれ虚血性心疾患を示唆する
  • 本例は冠動脈バイパス術の既往があり慢性左心不全の増悪と診断 ➜ 利尿薬の追加と減塩指導を行い2週間後に再診

👾 独り言
  • 蹲踞負荷は前負荷(静脈還流)と後負荷(下肢血管抵抗)がいずれも上昇します.さらに蹲踞時にはバランスをとろうと前かがみ(前屈負荷)になる多いことが多いため,個人的にはトリプル負荷と呼んでいます(旧"最強"負荷法).
  • 今回はさらに吸気負荷を加えているため,これが外来診察室で行える"最強"の心負荷かもしれません(命名:負荷の四重奏).もちろん蹲踞負荷は膝痛などで施行できないことが少なくないので,応用範囲は限られますが…

松下記念病院 川崎達也)